ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『Hamlet』
『Hamlet』@世田谷パブリックシアター
立ち見で3時間(しかも一幕が2時間あるのな…)。しかし行った甲斐はありました。
この企画が発表になった時は、とにもかくにもキャストに惹かれたのだが、その後これを手掛ける演出家がレイフ・ファインズ主演の『ハムレット』でトニー賞を受賞したジョナサン・ケント氏と言うことを知り、興味倍増。同じ作品を新演出するのは初めてとのこと。これは貴重な機会だ!と、一度は逃したチケットを何とか確保。
日本語のリズムを強調したかったのか、台詞として捉えるには聞き取りづらい箇所が結構あった。が、これイギリスで上演する場合、言葉遊びは通じないにしても、「奇ッ怪な!」「どっこい!」等、促音が耳に心地良い日本語を音声として楽しめるのではないだろうか。本場ではテキストとしてのハムレットは観客に叩き込まれているだろうし。
そもそもシェイクスピアの戯曲は、言葉遊びを除けば三分の一ほどの時間で上演出来てしまうと言われるくらいなので(笑)「神殿(寝殿?)で、死んでんのかー!」等ダジャレをダジャレとしてバッサリ処理している部分には好感を持った。そう考えると、笑いが起こる箇所は違えども、戯曲のニュアンスはしっかり伝わっており、言葉遊びかストーリーの流れかどちらかのみが突出すると言う片手落ちにはなっていない。この河合祥一郎氏の新訳はかなり面白いと思う。役者を選ぶ訳かも知れないが。
となると気になってくるのは演出。役者たちの動きの型を重視しすぎたようなきらいがあり、違和感を持つ部分が多かったのが正直な感想。むしろそこから外れた部分が面白かったりもして…となると、果たしてこの演出プランは成功しているのか、微妙なところ。終盤ガートルードが間違って毒を飲んでしまうシーンで笑いが出たのは、型にはまりすぎていたからだと思うのだが…このシーンで笑いが出たのを、ケント氏はどう感じているだろうか。
ハムレットと言えば極端な話、思慮が浅く自分勝手な若造だ。そこにどこ迄、父親を謀殺された苦悩や母親への愛憎、王子としての誇りを持たせ、悲劇の主人公として成り立たせるか。
野村萬斎さんは流石の貫禄。これを言うのはある意味反則なのだが、ホレイシオ役の横田栄司さんと並ぶとどうしても体格の差が目立ってしまう(身体のバランスはいいので、ひとりで立っている時はさほど気にならない)。長髪も微妙に似合わない(苦笑・宣美に使われていた写真の時の髪型の方がよかったと思われ…この宣美すごくよかったのに〜)と結構見てくれ的に不利な部分があるにも関わらず、それを所作の美しさと自らの“華”で、見事な癇癪持ちのハムレット像を作り上げていた。そうなってくると、体格の差も、少年らしさとして受け取ることが出来るようになる。「これで狂言役者の仲間入りぃ!」って台詞がウケるのは日本だから、萬斎さんが演じているからで、これは楽しかったなあ。
オフィーリアの中村芝のぶさんは良かったー!声のトーンが高いのにも驚いた。いやもうあれはオフィーリアだわ。気の毒だった…こんな時代に、こんな家に生まれなければねえとつい同情してしまうほど。ガートルードの篠井英介さんは手堅く行ったなあと言う感じ。しかしこのひとにしては珍しく迷いが見えたような気も…強欲なのか軽薄なのか、愚かだが息子を案じている母親像がクリアにならなかった。その揺らぎこそがガートルードなのかも知れないが…これはシェイクスピアの戯曲そのものの問題かも知れない。レアティーズの増沢望さんはトゥー・マッチな印象もあったが演出プランには合っていたのかも知れない。うーんここらへんは難しいな。
あとポローニアスの壤晴彦さん(身の丈に合わないものに手を出したオフィーリアの父親像が面白かった)、劇中妃役の植本潤さん(キュート!)が印象に残った。ギルデンスターンが大川浩樹さん、フォーティンブラスが鈴木豊さんってキャスティングが個人的には嬉しかった。
美術(装置)は素晴らしかった!劇場に当て書きしたんじゃないかと思うほどのハマりよう。装飾も素晴らしいのだが、機能美としてのアイディアが見事。学ランみたいな衣裳を着た、装置を動かす黒子的な役割のアンサンブルも印象的。
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07月05日(土)
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