ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『戦場のピアニスト』
『戦場のピアニスト』@新宿文化シネマ2
と、言う訳で。新作は初日から数週間後、映画館が空いてから観に行くのが常なんだが(混雑が苦手でね…)そうも言ってられなくなってきた。これからも延々混みそうなので、思い切って。オスカー受賞後、初めての水曜日(=レディスデー)だったので激混みでした。なんとかいい席を確保出来てラッキー。
以下ネタバレしてます。でもネタバレも何もな。展開を知っていてもあっと言う間、とてつもない緊張感の中での2時間半。冷静に観ようと考えていた。頭が醒めた状態で観ておきたかった。
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逃げる、逃げる、逃げる。見る、見る、見る。逃げるだけ、見るだけ。何もできない。助けてもらう。裏切られる。助けてくれたひとはどうなったんだろう。裏切ったひとは?多分、殆どのひとが死んでしまった。主人公であるピアニストは、誰も助けることが出来なかった。ひたすらその光景を窓の内側からひっそりと覗き込むだけ。
さりげない演出。と、言うか、演出を感じさせない演出。画面が綺麗でなければドキュメンタリーかと思ってしまう程、淡々とシーンが続く。逃げ方も地味だ。目立つから走ったりはしない。歩いて逃げる。ピアニスト・シュピルマン役のエイドリアン・ブロディが本当に痩せていく(ように見える)。
シュピルマンの感情もなかなか表に出ない。と、言うより、感情を噴き出すことの出来る環境がない。静かだ。ワルシャワが陥落したての頃は、まだ余裕があったような気がする。友人の妹とデートして、ちょっと呑気。いずれは終わる、この迫害もそう長くは続かないだろう。が、じわじわと状況は悪くなっていく。緩やかだ。まさかそんなことまでやらないだろう?と思っていたことが、少しずつ、少しずつ現実になる。しまいには、人間狩りを目撃しても力無く視線を落とすしかなくなる。
音楽家の話だが、その音楽もここ、と言う重要なポイントでしか使わない。音響効果も派手ではない。爆撃で傷んだシュピルマンの耳鳴りを模していると思われる、抽象的な効果が一ヶ所。これはかなり効いた。後半はひとりっきりになるのでセリフすらなくなる。ひっそりと暮らす。
カタルシスはない(あるとすれば、シュピルマンがドイツ兵にピアノを弾くシーン)。美談一辺倒でもない。勧善懲悪もない。派手な戦闘シーンがあるわけでもない。戦争映画って、大抵がドカンドカンで、実はちょっと「銃って格好いいかも」「戦車って格好いいかも」と思わせるシーンがある。それはそれでいいと思う。映画だから。でも、この作品にはそれがない。だからこそ恐ろしい。ゲットーを脱出してからは、いつドイツ兵に見付かるか、いつ捕まるか。この緊張感が3年間続く。
シュピルマンがひとりで瓦礫と化した街を歩くシーンは、あまりの空っぽさ(文字どおり街がなくなったと言うことと、これからひとりでどうすれば?と言う空虚さ)に絶句した。映画館で観る映画だ。
原作によると、戦後シュピルマンは自分を見逃してくれたドイツ人将校を助ける為に奔走し、ポーランドの権力者に直談判したそうだが、その描写は一切ないまま映画は終わる。
卑怯なわけではない。しかし他力本願と言う訳でもない。シュピルマンは、自分の力で命拾いしている局面もある。
原作であるシュピルマンの手記は当初、ドイツ人将校がオーストリア人に差し換えられて出版されたそうだ。発禁にもなっている。親切なドイツ人もいたこと、酷いユダヤ人もいたことを公平に書いた内容が当時は問題だった。1998年に草案が発見されやっと本来の形で出版、1999年にポランスキー監督の手に渡っている。
数奇な運命に翻弄された(アメリカを去る原因になったあの事件は自業自得かも知れないが)ポランスキー監督自身も、70歳になろうと言う頃になって、やっとこの作品を撮った。
それだけ時間がかかると言うことか。今起こっている戦争も、60年後にならないと消化出来ないのだろうか。いや、消化出来るのか?そもそも。それを繰り返すのか?
正直言葉が見付からない。感想を書いている今でさえ文字が上滑りしているようだ。つうか感想になってない。
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03月26日(水)
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