ID:43818
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by kai
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■『大統領暗殺裁判 16日間の真実』
今作にはこうだったらよかったのに、こういうことがあったら残された者が少しでも救われるのに、というフィクションがある。物語だ。傷だらけになり乍ら(そう、本当に何度もボコボコにされるのだ)最後迄闘う弁護士をチョ・ジョンソク、命令にただ従ったのではなく、“幸せの国”を願う自身の理念に基づき行為に及んだと気づいている秘書官にイ・ソンギュン。弁護士が秘書官を父に重ねて見る表情、弁護士の変化を感じとった秘書官の表情。法廷で主張を述べる弁護士の明晰な声、常に抑制の効いた秘書官の声が揺らぐ瞬間。みかんを優しく手渡し、受けとったそれをそっと掌に包む仕草。ふたりの演技が物語をより立体的にする。ふたりがハイタッチを交わすひとときの幸せな時間に、観客は強く心を動かされる。フィクションの、映画の力だ。

事件現場を訪れた弁護士が、そこで起こったことを“目撃”する場面がある。想像のなかで“その瞬間”に立ち会うこと。これも映画にしか出来ないことだ。こういう演出に弱い。ときどき入るちょっと笑えるシーンは、どんな状況でもへこたれない人間の逞しさを感じるいいアクセントになっていた。ジョンソクさんの得意とするコミカルな演技が光る。

全斗煥(もう劇中の名前をいう気にもならない)を演じたのはユ・ジェミョン。気のいいおじちゃんとか優しいおじちゃんの役でしか観たことなかったもんだからショック……と思ってしまう程の人物造形、腸が煮えくり返る。役者としてはやり甲斐あるだろうなあ、その分引き受ける迄随分悩んだそうだけど。陸軍参謀総長副官を演じたパク・フンも印象的だった。出演時間は多くないけど、あっこれは……という台詞を口にする。あーいいこといった! あーこのひと絶対このあと死ぬ! というような。『ハルビン』での日本軍人役も強烈だったし(というかこれでパク・フンを覚えた)、これからも注目したい役者さん。あと金載圭にあたる役のユ・ソンジュがすごくルックを寄せてて、アップになるとそうでもないんだけどちょっと後ろにいてピントが合ってないときとかギョッとする程似てた。資料写真で見たそのままの姿がそこにあった。

弁護士は「首謀者でもないあなたの名は歴史に残らない」と秘書官に告げる。しかし彼の名は歴史に残り、歴史に名の残らなかった人々の声は物語となり後世に伝えられる。五・一五事件を引き合いに出したり、裁判が日本でどう報じられているか日本の新聞を読んで知るといったシーンにハッとさせられる。韓国の近現代史を語るには、日本は不可欠の存在なのだと思い知らされた気分だった。

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・『大統領暗殺裁判 16日間の真実』┃輝国山人の韓国映画
いつもお世話になっております。配役全部書いてあるのほんと有難い

1987年7月9日は6月抗争で頭に催涙弾を受けたイ・ハンニョルの国民葬が行われた日。延世大学の仲間だったウ・サンホは李在明の首席秘書に選ばれ、アン・ネサンとウ・ヒョンは俳優になって今も活躍している。汚れ役を沢山こなしてきたウ・ヒョン、『大統領暗殺裁判』ではついに人権弁護士という大役に! pic.twitter.com/bayO9zgP6k— 崔盛旭 (@JinpaTb313) July 7, 2025
左の画像の左側、太極旗を持っているのが、弁護団長を演じたウ・ヒョンさん。不思議な巡り合わせというか、生き延びるとこういうことがある。だからこそ、ひとは決してひとの人生を奪ってはならないのだ

・映画「大統領暗殺裁判」(1) 大統領殺害と朴興柱┃一松書院のブログ
・映画「大統領暗殺裁判」(2) 裁判と処刑・その後┃一松書院のブログ
こちらもいつもお世話になっております、今作の字幕監修も手掛けた秋月望氏のブログ。韓国のファクション作品の背景を丁寧に解説されていて勉強になる。ジョンソクさん演じる弁護士は架空の人物だが、複数のモデルがいるとのこと。ウ・ヒョンさんについてのエピソードもこちらに詳しく載っている。45年後の今(まさに今!)金載圭の再審公判が行われていることもここで知った。
(2020年になってメディアに提供された裁判記録や捜査記録は)本来裁判終了後に廃棄されるはずだったが、陸軍本部の関係者が密かに保管していたものである。
という記述に目が留まる。軍部内にも裁判に疑問を持つ者がいたということだろう。

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08月22日(金)
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