ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『薄い桃色のかたまり』
上村正子と佐藤蛍(周本絵梨香とダブルキャスト)、女性ふたりの色がにじむやりとり。田内一子のコメディエンヌの才、大串三和子の声の魅力。かしましい女優たちの生命力、いさましくもなさけない男優たちのチャーム。ゆったりとした動きからも躍動が伝わる、感情が弾けるダンス(振付:井手茂太)。唯一無二の劇団と向き合い、劇作家/演出家は腕をふるう。「私は、今より先しか見ないの」という台詞を重本惠津子が発したとき、思わず拍手しそうになった。笑みがこぼれる。

モチーフとなった映画は『シェルブールの雨傘』。災厄によりはなればなれになった恋人たちが再会する迄、そしてそれから。恋人たちだけの呼び名にあれ? となり、傘店の登場に確信する。終盤にあのテーマ曲が流れたときのカタルシスといったら。この横糸の忍ばせ方、憎い! ラストシーン、闇に浮かぶ桜並木、どこ迄も続いていくかのような薄い桃色のかたまり(美術:原田愛)。現在と未来が交錯し、恋人たちがすれ違ううたかたの時間に別れを惜しむ。

さまざまな思いが交差するカーテンコール。ゴールドシアターのカーテンコールは格別だ。

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・自分の演劇を壊すものと出会う さいたまゴールド・シアター第7回公演『薄い桃色のかたまり』岩松了インタヴュー|埼玉アーツシアター通信 VOL.70
4、5ページ。
「通常、僕の書く戯曲は正確さを求めた、スピード感ある対話劇で、それによって緊張感やある空気を生んだりする芝居です。でも彼らとやりたいことはそれではない」「やっと自分の演劇を壊すものと出会えそうだという期待があります」
岩松さんのインタヴューって、書くものとは違って謎を残さないように話してくれるよね。同誌に連載中のエッセイも毎号楽しみにしています

・演出助手に井上尊晶の名前。ゴールドの面々のケア含め、ノウハウを知っているひとがいるのは心強い

・蜷川さんのメモリアルプレートも見てきました。遺品がおさめられたケースの横に、小峰リリーさん逝去のしらせ。新聞に訃報が載ったのは25日だった。演出家と長年組んできたひとたちも、だんだんいなくなってしまう

・昨年『NINAGAWA STUDIO』と名付けられた大稽古場の入り口に、ちょっと傷の入った『GEKISHA NINAGAWA STUDIO』というプレートが設置されていた。ベニサンピットで使われていたものかな

09月23日(土)
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