ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『CRESSIDA クレシダ』
作品解釈的なこと以外にも思い入れがあった。平幹二朗と煖エ洋の共演を観ることが叶った。蜷川演出のシェイクスピア作品で、自らの人生を照射したかのような演技を見せてくれたふたりだ。ふたりきりのシーンが二度あった。ひとたらしのシャンクを愛嬌たっぷりに演じる平さん、硬質で捩れた感情を鋭く投げつけるディッキー、煖エさん。倒れたシャンクを抱きとめ、人払いをし、遺言をひとことも聴きもらすまいと彼の顔を切迫した表情(蜷川作品で何度も見たあの顔、だ!)で見つめるディッキーのシーンは、かつての名優とかつての名少年俳優といった役柄の向こう側をも見せてくれたように感じた。期間限定の職業、期間限定の人生。やっぱり蜷川さんを思い出してしまう。演出家(演劇)への大きな憎悪と愛情。それを共有する、ふたりだけの約束。甚だ思い込みだろうが、そう見えてしまう。強い感慨があった。そして子役出身の浅利陽介、ベテラン花王おさむ、「若手」を卒業しつつある碓井将大、藤木修、橋本淳。今、この舞台に立っている俳優たちの思いが、鏡に映るかのよう。演劇は世界を見せてくれる。
シャンクは死の間際、未来を想像する。女性が舞台に立つ劇場を、女性が女性を演じる演劇を。彼はその可能性に大きな喜びと希望を語りかけ、人生を終える。その表情は幸福に満ちている。カズレーザーの名言思い出したわ……「人間どうせ幸せになるのよ」。
演出、翻訳が演劇集団円所属。劇団の地力を感じました。てか森さん、網羅は出来ていないけど近年手掛けたものは悉く好きだなあ。個人的には『東海道四谷怪談』に再挑戦してほしいのねー。あの空間使いをまた観たい。一座の公演が行われるグローブ座の舞台裏でもありシャンクが向かう天界のようでもある、美術(堀尾幸男)と照明(原田保)も素晴らしかったです。
09月10日(土)
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