ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■National Theatre Live IN JAPAN 2016『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
そしてカーテンコール。日本版の演出を手掛けた鈴木裕美さんのツイートから、この「ショウアップされたカーテンコール」はホンに含まれていることを知っていたので、今回もそれを待っていた。日本版上演時、自分は単に楽しいカーテンコールとして観ていた。やりきれない幕切れからのショウに救われた気分になった。しかしそれが何故なのか、どういうことなのか気付いていなかった。別の日に観た友人の言葉が忘れられない。「あのショウに、幸人にとっての数学の美しさとそれでもこの子は頑張るかもしれないって可能性を感じてはっとなった」。そうだ、そうなのだ。

本編中「数学に興味のない観客にわざわざ聞かせることはない、どうやって解いたかはカーテンコールで紹介すればいいのよ」と教師はクリストファーに釘をさす。本編が終わり、観客の拍手に迎えられ出演者が礼、舞台を離れる。観客は帰らない。彼を待っている、解答を待っている。彼が出てくる。拍手を受け、深く礼をする。そして生き生きとした瞳で、表情で、劇場施設と機構の素晴らしさを紹介する。そしてその効果に乗って数式を解く。映画館の観客も帰ることはなかった。カーテンコールは数式の解だけでなく、彼の見ている世界をも紹介してくれる場だったのだ。観客は彼のことを知りたい、理解したい。それが伝わるカーテンコールでもあった。

NT版では、幕切れの主人公の問いかけは日本版よりもドライに響いた。音楽を使う箇所がはっきりしていて、強い客観性を持つ主人公の内面、あるいは社会のノイズを表現する劇伴がつくことが殆どだった。反面日本版には叙情があった。音楽を担当したかみむら周平の特性ともいえる。そういう意味では日本版の余韻も捨て難い。裕美さんと蓬莱竜太の手による日本版の翻案がとてもよく出来ていて、プロダクションも出演者も素晴らしかったなあと改めて思う。しかしこうなると韓国版も観てみたかった、先月渡韓していたとき上演中だったのだ。今後もいろんなプロダクションで観てみたい作品。そういえば、ねずみやいぬがほんものなのは共通みたいですね。かわいかった。

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その他。

・『欲望という名の電車』を観たときにも感じたけど、マイク装着は映像用なんだろうなあ。動きまわる役者(特に今作は、ダンス的な振付も多いので)の台詞を集音マイクで拾うには無理があるのだろう。しかし気になる

・ナショナル・シアター・ライヴ 2016 OFFICIAL SITE『夜中に犬に起こった奇妙な事件』

・The Curious Incident of the Dog in the Night-Time | Background pack(PDF)
ナショナルシアターが「Resource packs」として配布している資料。プログラムともいえますね。いろいろと参考に

・Curious Incident of the Dog in the Night-time by adriansutton | Adrian Sutton | Free Listening on SoundCloud
サウンドトラック

・アレクサンダー夫人がオススメしていたバッテンバーグケーキ
食べてみたいようなみたくないような(笑)

(20160226追記:)
・NTLive 「夜中に犬に起こった奇妙な事件」字幕の問題点 - Togetterまとめ
単純な誤訳から誤変換(誤字)迄、NTLの字幕は当初から結構どうなのよて言われてましたよね。これをきっかけに字幕担当の方が交渉してくれるようですよ。好転するといい!

02月24日(水)
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