ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ヴェローナの二紳士』
プローティアスの三浦涼介とヴァレンタインの高橋光臣は対照的。だます側とだまされる側。悔いる側と許す側。えっ、そんな簡単に友情を裏切るの? そんなに後悔するくらいならやるなよ……と、強引なストーリー運びでもあるこの作品で、観客を納得させなければならない。高橋さんは素直さと天然が紙一重のようで、人間の大きさを感じさせるヴァレンタイン。これは周りが助けてあげたくなります。三浦さんは役柄としては本当に憎たらしいというか、はっきり言ってしまえば最低な人物なんですが(笑)役者としてはこれはやってみたいと言うかやりがいがある役だったかと。シルヴィアにひと目惚れしてしまったときの表情、行動に溢れる愛嬌と言ったら…これは憎めないわー。神さまから愛される、その分いじられる(笑)人間だった。そして三浦さん、月川さんととても顔立ちが似ています。ふたりが相対する場面では、月川さんが数年前の自分と対面しているよう……なんて錯覚を覚えたりもしました。

そうそう、この日はジュリアがプローティアスに渡す指輪を間違えると言う致命的なミス(…)をやらかしたんですが、三浦さんのフォローが絶妙で大ウケの場面になっていました。狼狽する溝端さんのリアクションがまたよくて、喜劇が一周まわってアドリブじゃないんじゃないの? と思ったくらい。アドリブと言えば、ほんもののいぬ(ラブラドル。かわいい)にじゃれつかれながら言葉遊びふんだんのモノローグをやりきる正名さんがたいへんそうです(笑)。こういった予期しないハプニングも満載、それにグイグイライドしていく演者のドライヴ感、最初から最後迄幸せな舞台でした。

希望を語らず、悲劇を自分のこととして闘い続けてきた演出家が、生まれたことを、生きることを祝福するかのような喜劇をつくりあげた。観られたことが本当に嬉しく、感謝するばかりです。

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そうそう、開演前、出演者でもある音楽家たちがロビーでミニライヴをしています。早めに行くと楽しいですよ。

10月17日(土)
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