ID:43818
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by kai
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■『リチャード二世』
いやーやられた、気付いた瞬間声をあげそうになった。こうやって勘所を押さえるか! 体格の良さは車椅子に座ることで隠す、老人の動作は筋力を用いた動きの抑制で表現する。見事に“老い”に化けている。それでいて、ボリングブルックに付き従う姿には弁慶のような威厳も漂う(扮装からして意識的だったと思う)。義経のボリングブルック、弁慶のヨーク公……ハル皇太子(のちのヘンリー五世)とフォルスタッフの姿を見るようで、漲った一瞬。
手打隆盛、小久保寿人の化けっぷりにも瞠目。殺陣(栗原直樹! このひとの擬闘ホント格好いい)の迫力には鍛錬の度合いが滲み出る。そして前述の隼太さん、満を持してと言ってもいいのではないか。大役を遂に掴んだ。下剋上上等の集団にあって、古株が頭角を表す瞬間を目撃出来たこの興奮。増してやそれが鮮烈な演技。
幕切れは幕開けと対になる。先王の弔の場は、そう時を空けず宴へと変わる。談笑し、タンゴを踊る。七十人弱の登場人物たちのなかに、ボリングブルックの姿を探す。そっと彼のもとにスポットがあたる。広い世界、たったひとりにあたるスポットライトは、長い時間においては一瞬でしかない。それもまた暗闇に溶けていく。
そう考えるとこの作品は、バックステージものとしても観ることが出来る。王座(役)を得るため、熾烈を極める集団内競争。それを経て舞台に立つ役者。次の座を虎視眈々と狙う後続の視線を感じ乍ら、ボリングブルックはタンゴを舞う。
『彩の国シェイクスピア・シリーズ』、残るはあと七本だそうだ。
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・配役について(2/12現在)
・さいたまネクスト・シアターのリチャード二世配役表。(2/12現在)
イザベラはトリプルキャストのようだ。自分が観た日は長内映里香さんだった。しかし松田さんがボリングブルックのヴァージョンもあったのか! それも観てみたかったな。あと女方が演じた役もあったよね? イザベラではなくて、オープニングで松田さんばりに長身の女性がいるなあと思ってよく見たら男優さんだったと言う……パンフレットによると、稽古では女優が男性を演じるケースもあったそう
・蜷川幸雄はなぜ俳優を脱がせるのか。「リチャード二世」主演、新鋭・内田健司に聞く1 - エキレビ!
・蜷川幸雄との出会いが人生を変えた。内田健司に聞く2 - エキレビ!
フラジャイルな青年像を体現する役者は、蜷川カンパニーに代々いる。所謂ガタイのよい松田さんあたりを脱がさないところにも、具体的なヴィジョンがあるからだろう。松田さんに代表される青年像もカンパニーには代々いて、松重さんもその血脈ですね
04月12日(日)
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