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by kai
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■朗読「東京」『白痴』
川口:同じく初めてです。手塚(眞)さんの映画は以前観ましたが、それだけですね
山本:昨年劇団で、安吾の作品から想を得た芝居を上演しました。とても共感する部分があって。それで今回お話を頂いたとき、この『白痴』を選んだんです
川本:『白痴』には、昭和二十(1945)年四月十五日にあった蒲田の空襲(城南大空襲)の描写があります。皆さんは太平洋戦争についての話って親御さんとかから聴いたことはありますか?
川口:ないですね…映像や史料から知って、想像して考えると言う感じです
藤井:家族からはないですが、学校の授業や映画、ドラマ等で知っているくらいです
川本:皆さんご出身はどちらで? 空襲はあったところですか?
川口:鳥取です。あったと言う話は聴いたことがないです
藤井:新潟です。あったらしいですけど詳しくは知らないですね
山本:山梨です。空襲の話は聴かなかったけど、僕はおじいちゃんが海軍にいたんです。それで片目を失っていて。臨場感たっぷりに話を聴かせてもらったりしました。あとおじいちゃん、(進軍)ラッパの音色をよく口ずさんでいたので、それがとても印象に残ってます
川本:あー、おじいちゃん。そういう世代ですよねもう。僕は昭和十九年生まれで東京でね、記憶は全くないのですが五月の空襲(山手大空襲。1945年5月25日)でウチが焼けてしまったと聴きました。何もかもなくなっちゃってね
藤井:今回朗読して思ったのは、今迄ドラマや映画で観た戦争ものって、誰か大切なひとがいる、そのひとを守りたいって言うのが前面に出ているものばかりだったんです。家族や恋人等、誰かを守りたい、誰かを思って…と言う。でもこの『白痴』では、伊沢にとって白痴はただの肉体に過ぎないと思っている…伊沢も白痴もとても孤独で。それがとても印象に残って
川本:素晴らしい感想ですね! 伊沢と言う人物は若くて、
山本:あ、僕! 伊沢と同じ歳なんです!
川本:てことは……
山本:二十七です!
川本:えっ、若いですねえ!(会場からもへええと言う声)…そう、若くて健康な男性なのに、終戦の年になっても徴兵されてない。安吾がこのとき四十くらいで、『白痴』は終戦の翌年に発表されています。安吾も徴兵されていないんですね。太宰治もされてない。本人たちは何も語らなかったし、これは憶測に過ぎないと前置きしますが、彼らは家がとても裕福だったんですね。安吾は新潟、太宰は青森の有力者で。徴兵する側になんらかの感情が働いていたのではないかと思われます。兵隊にとられたひとととられてないひとってのは、戦争に対する認識にも大きな違いがあるんだと思います。安吾は大田区に住んでいて…以前大森区と蒲田区があって、一緒になったから大田区になったんですよね…安易でしょう(笑)、そして空襲にも遭っている。白痴と出会ったかは判りませんが、まあそこはフィクションだと思いますが、この作品には安吾の実体験や心情が反映されているのでしょう
川本:このシリーズ三回目なんですけど、出演者の皆さん仰るのは、朗読は芝居よりも難しいと
川口;そうなんです! 今回何箇所か噛んでしまいましたが、僕、台詞のところは全く噛んでないんですよ(笑)
藤井:ト書きと台詞があるので、自分の状態を瞬時に切り替えなくてはいけないので難しいです!
川口:芝居だと動きにも意味を込められるけど、朗読だとそれが制限されるので…とても難しいです
川本:最初は伊沢と白痴、と言う感じで聴いていたけど、だんだん情景が拡がっていきましたね
川本:『白痴』は純愛小説の側面もありますね、孤独なふたりが出会って。空襲後の場面はとても静かな、美しいとも言える描写になっている。もしかしたらふたりは既に死んでしまっているのかも…と言う解釈も有り得ますね
山本:あっ、最後に言いたいことが! 最初はもっと文字や映像の効果を入れていたんです。でも、それがなくても役者さんたちが表現してくれるなってところがあったので、どんどん効果を減らしていったんです。ホントふたりとも素晴らしくて、僕ふたりのことが好きになってしまって。そんな深く知り合いな訳でもないのに
川口:(笑)三回でしたっけ?
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01月07日(水)
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