ID:43818
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by kai
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■『ロミオとジュリエット』
菅田将暉さん、感情の振り幅が大きいロミオがしっくりきていた。ひとなつこい感じが好印象、あんな子だったらロレンス神父も面倒見てあげたくなるわ。膨大な台詞を激昂口調で続けなければならないうえに始終走ったり転げ回ったりしているので、身体の負担はかなりのものだと思う。怪我なく千秋楽を迎えられますように。直情的な姉妹や女ともだちの横に控え、そのクールさとニヒルさで観客を虜にする人物を演じる印象が強い月川悠貴さんは、表に激しさが出てこないジュリエット。泣き、嘆くときも静かだが、心のうちには青白い炎が揺れているよう。新鮮なジュリエット像でした。そしてこのひとはとにかく口跡が美しい。翻訳調の台詞がするりと頭に入る。二度ある「帰ってきた」と言う台詞の響きにはっとする。ロミオの返事を持ってきた乳母に対する、期待と不安の入り交じったひとりごと。
今回、2001年以降の蜷川版『ハムレット』や『真情あふるる軽薄さ』に連なる、戯曲にはないラストが用意されていた。開幕から印象に残る、痩躯で青白い顔をしたひとりの青年。何度か出てくる若者たちの戯れのシーンで、毎回虐げられている。佐藤匠さん演じるこの人物は、終幕ふらりと現れて、ロミオとジュリエットの死を嘆き和解しようとするひとびとを客席から見詰める。しばらくして彼は立ち上がり、手にしたマシンガンで広場の全員を殲滅する。死体の山を通り過ぎ、扉の向こうへと消えていく。
悔い改めても遅い。失われた命は戻らない。一度始まった殺戮は蜷川版『ハムレット』におけるホレイシオ同様、必死に和解の道を探っていたベンヴォーリオやロレンス神父をも巻き込んでいく。この演出、個人的には『ハムレット』のときよりもストンと腑に落ちました。
ちなみに今回オールメールキャストでした。なんかもうそういうこと忘れるくらい作品自体が面白かった。
08月12日(火)
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