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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール TOUR 2014『戦前と戦後』
終始笑顔が多いステージ上だった。皆よく笑う。笑顔を交わし乍らお互いの間合いを取る。MCの無茶振りに笑う。本編最後「たゞひとゝき」の前、不測の事態に関して菊地さんがぽろっと言ったこと。その後照れ隠しのように歌詞カードを忘れたと舞台袖へ引っ込んだこと。早川さんのインプロ導入、フィンガースナップでリズムをとり始める林正樹さん。フロアから自然に起こる手拍子。その後眼前に拡がったのは、夢のような光景だった。

菊地さんは歌詞カードを持たず、ゲストをひきつれて現れた。フィンガースナップを鳴らす彼らのパレードとダンス。この夜ここで見たものは、ベジャールの『M』終幕、「J'attendrai(待ちましょう)」の風景のようだった。何を待っているのか。四番打者の帰還でもいいし、いつかまた会いたいひとでもいい。もう二度と会えないひとでもいい。

I.C.Iへの「バイバーイ」のトーン。明日会えるひとにも二度と会えないひとにもあのトーンでバイバイって言えたらいい。あとになって「ああ、あれが最後だったんだなあ」と思う。「喋らない設定」のI.C.Iが思わず帰り際「バイバイ」と応えてしまった(これもライヴならではだ)、あの「バイバーイ」。あの世のことは知らないし、あの世の風景を見たこともない。それでもあんな風景があるなら、そこで先に行っていたひとに会えるなら。こんな素敵なことはない。「共にいきましょう」は「行きましょう」でも「生きましょう」でもあるのだろう。この夜目の前で起こった出来事を死ぬ前に思い出せたらいいな、と言う気持ちになる。歌が招いた夜会だ。

歌のコンサートのつもりで来たので、アルバムコンセプト押しで通すかな、このまま終わってもいいな、と思った。するとアンコール、「このまま終わるのか?とお思いの方もいらっしゃるでしょうから」「アルト持ってるからもうお判りでしょうが…」と「Killing Time」を演奏。これ、ストリングスパートのポテンシャルを示すバロメータにもなる楽曲なので正直わわっとなりました。アレンジも変わっていて、弦に早川さんが併走してリズムを増強していた。ストレンジ感が加味されている。編成やアレンジを変えてコンスタントに演奏される、楽曲のクロニクルを目撃する思い。今後が楽しみになる。

それにしてもEXシアターのあのギラギラっぷりは入るときなんか恥ずかしいわー。田舎者ってバレる!て挙動不審になる。

05月15日(木)
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