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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■ハイバイ10周年記念全国ツアー『て』
実際に舞台で観て印象的だったことをいくつか。まず美術。四隅の柱はまるで火事で焼け落ちたかのように焦げ付き、床につくことなく宙に浮いている。そして舞台はあるタイミングで傾斜になる。業火で傾き、崩落しそうな家に集まってくる家族のことを思う。直接役者が持って移動させる、と言う最小限の動作で、観客の視点を変換させるスイッチとなるハイバイドアは効果絶大。ハケて演技エリア外から舞台を見つめる岩井さんが演出家の顔になっている瞬間の格好よさ、おかーさんの扮装してるのに(笑)。昼間のパパは〜ちょっとちがう〜昼間のパパは〜男だぜ〜♪ですね。夜だけど。そして長男役の平原さん。うっわ平原さん、前回(映像で)観たときは「つくりが違う」長女の旦那だったんだよ!これも再演が繰り返されるならではの面白さですね。今回家族の不和ド真ん中!あの「得体の知れなさ」は過去ハイバイで観た平原さんの他の役にも通じるのですが、これが後半効いてくる。いやあのうざったさ俺を理解してくれ俺は自分からは言わないけどっぷり、うぎゃー!いやー!(ほめてる)上田さんの末っ子っぷりはもうだいすき。あと観る度同情を禁じ得ない次男のともだち…(笑)他人の家族の大げんかに居合わせて、「怖かったでしょう」と言われて「はい………(はっ)いや、大丈夫です」て返すあの瞬間!ここおかしいやら気の毒やらでもうたまらん!だいすき!高橋さんのおどおどっぷり最高でした。もうさ〜こういう状況下にともだちつれてきちゃう次男は無邪気だよね〜ホントにさ〜!とまたのたうちまわる。そしてまた身につまされる(笑)。
そして舞台で観るあのシーン…「母親が見た白昼夢」と言おうか、家族皆が肩組んで大合唱する「リバーサイドホテル」は格別だった。これは幻に終わるのか、いつか見ることの出来る光景か。その光景は生きている世界にあるのか、それとも死後の世界なのか。さまざまな感情が頭に溢れ、母親と一緒に心のなかで慟哭した。
ふと青山演劇フェスティヴァルで観たMODE×青春五月党の『魚の祭』を思い出しました。家族のいざこざ、そして葬式を「面白く」、せつなく描いた秀作だったと記憶しています。『魚の祭』はあっけらかんと和解し再生する家族の物語で、柳美里さんと岩井さんの家族の描き方は違うものだとは思いますが、どちらも「面白かった」のは確か。それもあって『て』を青山円形劇場でも観てみたいとも思いました。『その族〜』は円形でやったんだよね、観たかったー(泣)。今回は対面客席での上演。転換に効果的なものになっていました。
恒例上演前の諸注意に「携帯ヴァイブが鳴っても自分のじゃないふりをする」が新しく加わっておりました。「これはもう、恐怖です」「ここ迄言って解らないひとにはもうどうすればいいのか…恐怖しかないです……」ほんとほんと。この「暗黙の了解」ってハイバイの作品づくりにも深く関わっていることだし、演劇全般、そしてコミュニケーションにも言えること。こういうことを諦めず、根気よく考え続けていくことのだいじさについても考えました。劇団10周年とのことですが、劇団でチケット買ったらおまけくれたりする手づくり感が10年やった今も続いてるってすごいことです。フレッシュ感溢れる手だれっぷりと言う不思議存在。おまけ交換済みの印としてチケットに捺してくれたはんこが手づくりっぽくてまたかわいかった。
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おまけ。ちょっと前のものだけど、このインタヴューは今読み返すといろんなことを考えるヒントになりました。
・アーティスト・インタビュー:岩井秀人(ハイバイ)| Performing Arts Network Japan(2011.8.22)
05月31日(金)
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