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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■BOOM BOOM SATELLITES EMBRACE TOUR 2013
その後音楽のナリが変化したり、サポートドラマーの平井さんが辞めたり、NINE INCH NAILSの影響が色濃くなってきた。『PHOTON』前後からのバンドの変化にNINがひとつの指針になっているのは明らかで、NINは自分もとても好きなバンドなだけに困惑した。しかしパクり云々と言うことではなく、音の組み立て方、鳴らし方、リスナー参加を促すインタラクティヴな活動展開、そして実験的、攻撃的でありつつ高水準のアートとしてのライヴステージを作り上げようとする意欲と姿勢に好感が持てた。今回のステージアートは、2006年、2008年のSTUDIO COASTで継続的に採用していたものの到達点のように感じた。STUDIO COASTでは音も照明も窒息する程圧が高く、それがバンドの過剰さとも合致し、感動し乍らどこかで怖いとも感じた。このハコでは収まりきらない、そう思った。それが武道館では、容れものと本人たちがやりたかったプランとのスケールがぴたりと合っていた。必要だった“規模”がある。

横幅をたっぷりとった巨大LEDフェンスが「HELTER SKELTER」で一斉に点灯されたときのインパクト!赤が目に焼き付く、どよめきと大歓声が同時に起こる。そして天井の高さが相当ないと使えない設計の照明。バトンとスタンドが一体になったようなもので、形状を変え乍らさまざまな位置に動かせる。ステージへの照明角度が自在なうえ、その骨組が放射状になったり星状になったりと動くさまも美しい。そしてだてに八角形じゃないぜ(笑)、大人数収容であり乍らステージとの距離が近い。前回の大バコ、2010年幕張イベントホールは縦長だったから尚更そう感じた。プレイヤーをそう遠く感じない。ちらりと「NINが日本でも人気あって、武道館でライヴやれてたらなあ…」と思ったのは内緒です(笑)。しかしそう思う程の空間が出来上がっていたのは確か。

これらステージセットの規模と距離感は生で観てこそだった。配信で観ればいいや、と思えるものではなかった。音に関してもそうで、曲が肌に触れるような感覚はライヴならではだ。いろいろな事情があって会場に来られなかったひとも多いと思う。その辺りにも配慮し、なおかつただライヴ中継をするだけではないさまざまな試みもあったようなので、配信ならではのよさもあったのだと思います。中野さんが大泣きした顔は現場では観られなかったですしね。それでもあの場にいられてよかったと思う。

これだけのプランの実現は、今回の川島さんのこととは直接は無関係だ。数ヶ月、いや数年前かも知れない、再々発が判るずっと前から準備を進め、そして素晴らしいステージになっていただろう。苦節十五年なんて浪花節的な悲壮感はないにしても、クラブからスタートしたバンドが武道館に、と感慨深いものになっていたと思う。しかし今回のライヴはやはり特別な意味を持つものになった。帰ってきた川島さん、それを待っていた中野さん。そしてサポートのyokoさんやスタッフたちの尽力で、この日を迎えることが出来たのだ。無事終わってくれとひたすら祈り乍ら観ていたが、それを忘れるくらい楽しい瞬間が沢山あった。楽しかった、本当に楽しかった。そして心を打たれた。バンドの集大成であると同時にこれは新譜『EMBRACE』のツアーであり、これ迄あったこと、これからあることを全て受け入れ抱きしめるような大きな世界がここにはあった。


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05月03日(金)
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