ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648568hit]

■『走りながら眠れ』
そんなさりげない夏の風景のなか、なにげない会話から浮かび上がる夫婦の姿。家事にも積極的な夫、翻訳を手伝う妻。栄の優しさ、野枝の強さ。ふたりのあっけらかんとした思想、うっすら漂う未来からの陰。尾行のひとを気軽にお茶に誘ったり、訳していたファーブルの『昆虫記』の解釈の違いにちょっとむくれたり、コワい話をワザとしたり。畳敷きの部屋ってのがまたよくて、ふたりはそこでお茶飲んだりお菓子食べたり、あぐらかいたりゴロゴロ寝っ転がったりし乍ら話す。そこにほわんとした色気が宿る。栄が野枝の足首ひっぱってじゃれて、野枝のふくらはぎが露になるとことかドキッとしたー。腿じゃなくてふくらはぎ、こういうエロス大好きです。ゴロゴロしてるうち足がつった野枝が、だまーーーーーってゆーーーーーっくりのたうちまわっていたシーンも笑ったわー。ジワジワくるおかしみ。

本来これらの光景は他人が見ることのないもので、栄も野枝もお互いにしか見せなかったであろう表情を観客の前にぽーんとさらけ出してちゃってる訳です。これは照れる。こういうところが覗き見っぽくて、もーふたりがかわいらしいやらあいらしいやらノロけやがってにくたらしいやらでニヤニヤするわ!てなものですよ。また声がいいんだよね…張らない声、家でフツーに喋る音量。演じたのは野枝=能島瑞穂さん、栄=古屋隆太さん。いやー惚れるわー、古屋さんは勿論能島さんにも惚れるわー。ふたりとも服が似合うわー、和服も洋服も。あ、あと古屋さん、擬音が上手い。汽笛とか、シャンパンの栓抜く音とか(笑)。それにしても栄の白いスーツ+カンカン帽、これは男前が着ると男前度がより上がるね!古屋さんもー男前でたいへん。ネクストシアターで栄を演じた松田慎也くんも美丈夫でしたもんね。

それにしても平田オリザの作品のタイトルはどれも格好いい。走りながら眠るように生きたふたりの最後の夏。シンプルでいて味わい深い作品でした。

こういう良作を気軽にふらっと小さな劇場に観に行ける、って環境があるといいですよね…実際はパンパンの満席だったので当日券どのくらい出したか判らないが。自分の席だけチラシの束に当日パンフが折り込まれてなくて(多分前回のひとが当パンだけ抜いて帰っちゃったんだと思う)スタッフクレジットが分からないのがちょっと残念(泣)。と言うか、「当パン」って言うんだと初めて知りました…(スタッフさんが言ってたのを聴いた)。

04月17日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る