ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『2013年・蒼白の少年少女たちによる「オイディプス王」』
コリントスからの使者役、松田慎也さんは受けの芝居がどんどん巧くなるなあ。ユーモアを交えたキャラクターで、しっかり笑いもとっていた。ネクストから役者を志したとは思えん…長身だし、もともと姿がいいひとなので中央に立つ芝居でも惹き付けられるし、コロスやってるときにも目が行ってしまいます。そして巧いと言えば手打隆盛さん。こちらはネクストに入る前から舞台経験豊富だった方で、ネクストの老け役を一気に請け負っている印象です(笑)。ふたりとも既にニナカンのプロデュース公演に出演しているし、これからもその機会が増えていくのでしょう。土井睦月子さんも同様で、今回の宣美にあるよう男ットコ前な美形でもあり、母、妻と言った役をセクシュアルな色気を漂わせつつ演じられる貴重な女優さん。てかこれ迄ハムレットのガートルード、今回のイオカステと禁忌の愛に身を投じる役が多いので(『話してくれ、雨のように…』でもワケあり女性役だったしね)、逆に現代の若者の姿としての彼女を観てみたいと言う欲求も沸きました。
蜷川さんがいらしてました。この公演の稽古中に入院、それについての報告と挨拶が客席に配布されていました。演出補は井上尊晶さん。こういうことはこれ迄にもあったし、これからもある。蜷川さんがやりたいこと、形にしたいことをスタッフや役者たちが汲み取る作業も多くなる。それがどのくらい伝えられるかを観ていくことにもなる。退院されてひとまずよかった、おだいじに。まだまだ蜷川さんの作品、沢山観たいのです。客席から蜷川さんを見付けた吉田鋼太郎さんが、ほっとした笑顔を向けて挨拶していたのが印象的でした。四月の『ヘンリー四世』に鋼太郎さんは出演されます。稽古が始まるのももうすぐなのでしょう。
その鋼太郎さん、カーテンコールでスタンディングオベーション(そうスタオベありましてん、予定調和じゃないやつ)。気付いた出演者の顔にぱあっと花が咲く、小さく手を振る。そういえばネクストシアターの千秋楽観たのって初めてだったなあ。キリキリと切磋琢磨しているのだろうな、と思わせられる舞台上の彼らからは想像もつかないかわいらしさ。小久保くんも今度はあなたが前に出なさいよ、みたく他の役者さんを前に押しやったりしてて、それがペンギンのおしくらまんじゅうみたいで微笑ましかったわー。そんな普通の若者である彼らの姿を垣間見られたことになんだかジンときました。
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その他。
・思えば『オイディプス王』で涙したのは初めてだったよ!物語をすっと心にしみ込ませてくれた演者の力もあろうが、何かしら、歳かしら。こどもの泣き声に一緒にえーんとなったよ!
・つうか両目抉って血ーだらだらのおとーさんてショック過ぎる。おかーさん首吊って死ぬし…てかそういうとこもこれ迄はあんま印象に残ってなかったわ…(ホンのヴァージョンが違うものなのかも知れないが。私が過去観たのはソフォクレス作、山形治江訳で、今回はホーフマンスタール脚本、小塩節、前野光弘訳。あ、あと山の手事情社の翻案で観ているのを今更思い出した。それ言ったらZAZOUS THEATERの『Thirst』も翻案だが)それこそイオカステの最後はギリシャ悲劇の常で「報告」されるだけなのだけど、その台詞がいちいち刺さってなあ……
(追記:『埼玉アーツシアター通信 No.43』にホンと訳のヴァージョンについて詳しく書いてあった!→PDF版P6-7)
・終演後。
「酷い話だよねー」
「ほんっと酷いね!くるぶしに穴開けてひもで繋いでとかもう酷過ぎ!オイディプス可哀相!おとーさんもおかーさんも、育てのおとーさんもおかーさんも羊飼いも可哀相!」
「そもそもさあ、オイディプスを殺そうと考えなきゃよかったんじゃん?神さまは試したんだよきっと!」
「……!(ソノ発想ハナカッタワ)」
「そんな神託あってもこどもを見捨てたりしません!て言ったら神さま『よおしおまえたちの愛は本物!幸せに暮らせ!国も繁栄!』とか言ったんじゃね?」
「……そ、そうかも………神さま気まぐれだよね………」
「ギリシャのひとたち神さま信じ過ぎ!(そんな身も蓋もないことを)」
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02月24日(日)
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