ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『シンベリン』
役者の才能とスキルによって説得力が増す、と言う面では大竹しのぶさんもそう。ヒロインであり、新妻であり、男装して少年となり、小姓を演じる。実年齢と演じる役柄の年齢差をこうも簡単に埋められる女優はあまりいない、実際目の当たりにすると納得せざるを得ない。こういうところは舞台の醍醐味でもあります。少年フィデーリとなったイノジェンが登場した場面はハッとする程のかわいらしさでした。清廉さを感じさせる、幼く美しい少年そのもの。激情の表現もコミカルな演技も自由自在だし、そして台詞の伝達力の強烈さ!やっぱりすごい。

そして勝村さんですよ。もう、いろんな意味でヒドい(笑)。最高です。前述のウィッグも似合ってたわー。暴走ギリギリの悪ふざけで好き放題。このギリギリってところが大事で、イノジェンへの思いや、国の後継者になろうとする確固とした意欲とプライドはしっかり見せる。もうほんっとバカ息子なので、どこ迄笑わせていいかのさじ加減が難しいと思いますが、ここらへんの切り替えは見事でした。ジュピター役も多分自作なのでは、紙のお面着用で嬉々として演じてらっしゃいました。あれだよねー勝村さんて王に仕える道化のイメージだ。身体も頭もキレる、状況を鳥瞰で見られる、そして命知らずで執着がない。いつか『リア王』や『間違いの喜劇』の道化役で観てみたいな。すっかりしっかり蜷川さんの懐刀ですね。

懐刀と言えば大石さんもそうで、誠実で善良なピザーニオ役、とてもかわいらしかった。この役あっちからもこっちからも無茶な命令されて可哀相よね(笑)だから彼のラストシーンの笑顔には、とても幸せな気分になりました。大石さんの笑顔、ホントチャーミング。

幼い頃誘拐され山の男として育てられた、第一王子ギデリアス(ポリドー)を演じた浦井健治さんもよかった。長身が映えるワイルドな役どころ。終盤実の息子であることを確認するためシンベリンに上着を取り払われるシーンは観客席が息をのむような色気と凛々しさがありました。あとクレジットはありませんでしたが、楽師の伴奏で歌を披露した仮面の男は浦井さんだよね?ミュージカルファンには嬉しいサービスだったのではないでしょうか。同じく誘拐された第二王子アーヴィレイガス(カドウォル)を演じた川口くんも次男坊らしい愛嬌のある青年っぷり。いやあ、いい役…このひとはこれからもいろんな作品で観たいなあ。この美しくちょっとユーモラス(クロートン退治の辺りとか大ウケ)な仲のよい兄弟が、実の妹と知らずにイノジェンを助け気遣うシーンはじんわりいいシーンでした。かわいらしかったー。

タイトルロール、シンベリンを演じる吉田鋼太郎さんは流石の貫禄、娘に怒るシーンは星一徹のようでした(笑)。鳳蘭さんもゴージャスで腹黒な王妃(名前もないんだよねえこの王妃・泣)を少ない出番で強烈に印象づけました。かっこええー。そしてポステュマスを演じた阿部さん。ロマンス劇の中にあって苦しむ役どころでもあり、妻を失ったと誤解して「もう生きていたくない」とのたうちまわるさまは今作品中異色なシーンなのですが、ここの空気の変えっぷりは見事でした。イノジェンを大事に扱う仕草も素敵。丸山智己さん演じるローマ将軍も、武人としての益荒男っぷりと小姓に翻弄されるコミカルさの二面性が格好よかった。

ちょっと惜しいと思ったのは、戦闘シーンのスローモーションがブレるところ。衣裳が重くて大変なのでしょうが、ここがビシッとキマればより説得力が増すように思います。『パーマ屋スミレ』での擬闘が印象深かった、栗原直樹さんによる殺陣そのものはすごく格好よかったです。


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04月07日(土)
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