ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648667hit]

■『欲望という名の電車』
もうひとつは宇宙(たかおきと読むのですね…今回初めて知りました)くん演じるイヴニングスターの集金人がコドモコドモしていたところ。これすごい効果的だった!パンフレットにもあったけど、この子性的対象として扱われたのは初めてなのでは、と思わせられる。もーあれよ、あのー幼少の菊地成孔のことを思い出した…あれはトラウマになる……つ、つらい!てかコドモに手を出してはいかん!いーかーんーよー!そしてそれによってブランチのヤバさが際立つのです。あーこんなことしてりゃそりゃ近所で評判になるわ、ヤバいババアがいるぞ!って…ベルレーブにいられなくなる訳だわ、そしてここにもそろそろいられなくなるわ。説得力あったよう(泣)。

そうそうあとひとつあった。スタンレーがブランチとああなっちゃったー、ってのは酒が入ってたのが大きいなと受けとれたところ。そうなる迄のスタンレーの酔いっぷりが陽性なんだよ。で、それが豹変ってんじゃなくて元の人柄からのグラデーションに見える。前半のポーカーし乍ら酔っ払うシーンと地続きに、自然に見られました。ブランチのドレスのストラップが片方外れると言うちょっとしたところもポイントになっていました、この辺り、スタンレーとステラのセックスシーン同様、新劇的とも言える具体的な演出によってとても伝わりやすくなっていました。

高畑さんのブランチは精神が崩壊していく過程の提出が素晴らしかった…怖かったし可哀相だったよー(泣)。肉感的で豪快なイメージのある女優さんですが(彼女が演じたステラも観てみたかった!)、高畑さん演じるブランチは、気丈に家を守って来た長女がとうとう持ちこたえられなくなる程の傷を負った姿ととれました。ブランチはそれだけのことをされたのだと納得させられる。高慢さよりも自分と違う人種とどう接したらいいのか判らず混乱している感じを押し出していて、今やそっちの種類の人間である妹にも怯えている様子がよく出てた。ミッチとのデート前に極端な躁状態に陥っていたり、観ている側に「あれ、このひとおかしい?」と言う不安をポイントポイントで見せていくのも巧い。ミッチにアランのことを語るシーン、兵隊たちがトラックに「ひなぎくのようにつみとられていく」思い出を語るシーン、圧巻でした。

カトリーナ被害で廃墟になった遊園地をモチーフにした島次郎さんの舞台美術もすごくよかった、入場した途端わあっとアガったよー。ブランチとミッチがデートで出掛けた場所が、思い出とともに朽ちていったかのよう。そのセットの上で、クラウンのような仮面を被り演奏する小曽根真さんのピアノも素晴らしかったなー。ブランチの幻聴であるポルカにディスコードを交えて曲調を狂わせていく。効果音の配置も絶妙で、電車の通過音が移動したりねこがよく鳴いたり、なんかもーブランチでなくとも心がざわざわして落ち着かない。この作品、つくづく音を観る芝居だなあと思った…。

高畑さんがカーテンコールで見せた表情が印象的だった。ブランチを演じきった顔、座長としての顔。真摯な表情で拍手に応え、最後の最後にぽろっと笑顔が出た。高畑さんが看護師役の頃からずっと応援してきたのかな、と思わせられる彼女と同年代らしき男性ファンが何人もスタオベしていて、そこにもジーンときたなー。そういう関係って素敵だ。隣席が懐中時計+オペラグラス持参のおじさまだったんだけど、ブランチがミッチにアランの話するところでさめざめ泣き出していた。いくつになっても感動出来るっていい…そういうのも含めて、豊かな観劇体験が出来たなあと嬉しかったです。

幕が下りてすぐに再演してほしい、高畑さんのブランチにまた会いたいなと思いました。

そうそう、パンフレットの『日本での上演記録』頁に、ZAZOUS THEATERの『銀龍草』が作品変更の経緯とともに紹介されていたのが嬉しかったなー。編集の大堀さんありがとー(涙)。

12月20日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る