ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』
キチッと振付らしい振付があったのは「Macarena」くらいかな。と言ってもこれはジェロームの振付ではなく、当時大流行りした「マカレナダンス」。所謂“ダンス”が起こらない曲もあります。「Yellow Submarine」ではセリが降りた奈落から黄色い照明が照らされるだけ。続いての「La Vie En Rose」はバラ色の照明が客席を照らす。そのタイミングで遅刻して来た客が係員に案内されて入場して来たものだから、演者が客席側から現れたと勘違いした観客の視線が集中、大ウケでした。同時に無言で苦虫を噛みつぶしたような表情の観客もいたことでしょう。

そのうち、ダンサーたちのバックグラウンドに興味がわいてくる。「Ballerina Girl」で上手側にいた女の子は実際にバレエをやってそうだな、動きが素人とは違う。とか、素晴らしい歌声を披露したふくよかな女性はオペラの心得があるのだろうか、等々。衣裳(私服かな)もそれぞれ個性がある。観客と地続きのような、観客の鏡でもあるような彼らが、今ここにいて生きているのです。

1シーンだけ、ステージに流れない曲がありました。出演者がイヤフォンを装着し、DJのキューとともにポータブルプレイヤーのPLAYボタンを押し、サビの部分になったらそれを大声で唄うのです。知ってる曲も知らない曲もあった。「あいわなびあどーっぐ!」と絶叫する男性、「俺の話を聞け〜」「わかりはじめたマーイレボリューション」「ふぁんふぁんうぃひっざすてーっぷすてーっぷ」、あちこちで爆発するメロディ。サビ以外の彼らは沈黙し、イヤフォンから聴こえているであろう曲に没頭しています。終わった順に退場していく。最後に残った女の子は「いきのーこーりーたーい、いきのーこーりーたーい」と唄い、笑い声と拍手をあとに退場。何故あの子にはあの曲だったんだろう、それともあの曲は自分で選んだもの?彼らはどういった思いでステージに立っているのだろう?

彼らはステージ上で飛び跳ね、身体を動かし、ハグして、タイタニックのポーズを組体操のようにとって(笑)、ゆったりと死体となり甦る。ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン、フレディ・マーキュリーの歌声とともに立ち上がり客席をまっすぐ見つめる彼らに盛大な拍手と歓声がわきました。90分の、音楽と身体の物語。

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そしてアフタートークが60分超(笑)ジェローム・ベルがかなりのお話好きで、しかもその内容がものっそい面白い!予定の時間を大幅超過です。そしてビックリ、ジェロームの通訳として出て来た女性が、先程迄ステージに立っていた方だったのです。この方の通訳がまた絶妙で、演出家と作品のバックグラウンドをちゃんと理解したうえで、微に入り細にわたりなおかつ解りやすい言葉にして、ジェロームの話を伝えてくださった。前回ジェロームが来日した際、「『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』の日本公演に出て!」と口説き落としたのも頷ける、魅力溢れる通訳さんでした。

なんでも初演(2001年)は相当な物議を醸したそうで、「こんなのはダンス公演ではない」「チケット代を返せ」と随分叩かれたそう。上演する国によって反応も様々で、その土地で上演された時期も反映される。イスラエルでは自爆テロ後の追悼行為としてある沈黙がステージ上にあるのを耐えきれず観客がパニックになってしまったり、政権が交替したばかりのブラジルでは何をやってもお祭り騒ぎ状態だったそうです(客席がな・笑)。興奮して客席から乱入して踊りだしたひともいたとか。「『Imagine』や『Sound Of Silence』のシーンで、観客が騒がず舞台を鑑賞していたのは日本で3カ国目です」だって。唄いだしちゃうひとがいた国もあったそう、わ、わかる……(笑)。反面「日本での上演でこんなに盛り上がるとは」と驚いていたようでもありました。


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11月12日(土)
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