ID:43818
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by kai
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■有元利夫展、八月花形歌舞伎 第三部
お家は没落、自分は夜鷹となってなんとか日々の糧を得るも、父は殺され、旦那はアレで、跡継ぎとなる男子を産んでも何の評価もされずむしろ疎まれ、自身の顔も存在の意味も崩壊していく。『四谷怪談』って何度観ても酷い話でお岩が可哀相でならないのですが、エンタテイメントとしての効力があるのか、世情とか伊右衛門の都合とかもまあ含み置く余裕もあったりはするんです。しかし今回はなかったな、そんなの!(笑)もーなんで!?なんでお岩がこんな目に遭わなきゃならないの?お岩何も悪いことしてないのに!とてもいい娘で、姉で、妻で、母なのに!女が背負うもん皆背負ってそれでも凛と生きているのに!どー(涙)てなものですよ……。

お岩の悲しみ、焦燥、怒りがこれだけ伝わったのは、勘太郎くんが若いからと言うのもあるのではと思いました。お岩は大役ですからベテランの役者さんが演じることが多いですが、考えてみればお岩さんの実年齢って、勘太郎くんの方が近いと思うのです。あの辺りの年齢だからこそ感じるものがあったと言うか…親が亡くなり長女として家を守らねばと言う責任感を負っているとか、若い娘に旦那をとられちゃうとか。上の世代は死んでいき、下の世代には追い立てられる。怒り、悲しみが実年齢に添うように感じられたのです。リアルだった。

そもそもリアルに見せない(=それこそが粋)為に歌舞伎の型があるのだとは思いますが、そういう約束事を打ち破ってこその歌舞伎だとも思うのです。そしてそれは、ただリアルに、ストレートに感情を出せばいいと言うものでもない。実際舞台上のお岩は慟哭したりはしません。言い回し、動きはしっかり型に乗っ取っているものです。ただ若いから、だけで務まるものではなく、技量も必要と言うことです。だからこそこれは今の勘太郎くんでなければ演じられなかったのではないか、とすら思いました。今だからこそのお岩像とも言えます。そういう意味でも貴重。今後勘太郎くんが歳を重ね、お岩像を更新していくのを目撃出来る楽しみもあります。

はーお岩のことばかり書いてしまったぞ。他も面白かったですよ…お岩を演じる役者さんは与茂七、小平も演じますが、その醍醐味でもある戸板返しの場面がちょっとギリギリでヒヤリとしました、ご愛嬌(笑)。そしてお岩役のためだと思うのですが、勘太郎くんすごく痩せてて、与茂七役やってる時にすごく華奢に見えた。しかしその分身体のキレがよく、大詰第二場『仇討の場』では軽妙さ溢れる殺陣で盛り上がりました。まあ勘太郎くんはいつもキレがよいが…お岩で抑えている分与茂七で炸裂と言った感じか。

はー勘太郎くんのことばかり書いてしまったぞ。他も(以下略)

・三角屋敷の場がないとやっぱお袖と直助のことは尻切れトンボになるよねえ…仕方ないとは言え
・舞台番(猿弥さんでした)お約束の「おや、お岩さんがいらしたようですよ」の後の客席いじりは毎度のことと分かっていてもやっぱりビビるよねー!
・演舞場なので歌舞伎座程どよ〜んとした真っ暗闇にはならないんだけど、やっぱり怖いわー
・そしてお岩が客席に!以外で「ぎゃあー!」と叫び乍ら知らせのひとが客席を横断して舞台上に駆け上がって来るって演出は初めて観た。あんまりビックリしたのでそのひとが何を知らせに来たか忘れた(笑)
・小山三さんがおいろ役で出演。舞台上ではお元気そうに見えました。笑いも沢山とりました。退場時に「中村屋!」と声がとんでジーン

・しかし同じ『東海道四谷怪談』の同じ場面でも「首が飛んでも動いてみせるわ」って台詞があったりなかったり、小平の指が折れてぶらぶら〜があったりなかったり、お岩の息子がねずみに連れて行かれた後も出て来たり出て来なかったり。これってどこのお家が主役をやるかとかによって違うんでしょうか?流派みたいな…未だによく判らない

・海老蔵さんの伊右衛門は…姿はかなりよかったです。あとやっぱこういう色男があーゆーDVやるとホンットムカつくね!(笑)蚊帳迄はぎとっていくとことかさ!あーホント腹立つ

08月14日(土)
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