ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『2番目、或いは3番目』
通過の物語でもあります。場所も通過するもの、家族のありようも通過するもの。政府から捨てられた地域。自然災害か、戦争か、もしくは何らかの実験の弊害か事故か(チェルノブイリもちょっと連想された)で廃墟のようになり、その中で日々の暮らしを続けるひとたち。「酷い」環境で暮らすひとたちに善行を施すことで自分の存在意義を確認したいひとたち、前の場所にいられなくなったが故に移動してきたひとたちが救助活動にやってくる。いちばん酷いのは自分たちではない、もっとつらいひとたちを助けてあげなければ。そこで安心を見出すのは、自分たちは「2番目、或いは3番目」に酷い目に遭っている、と言った相対的なもの。彼らは身を寄せ合って、お互いを必要とし、お互いを憐れもうとし、必死で生きている。

一幕目が終わった時点では、ああこりゃ後味のわるいものになりそうだな、と思った。終盤になるにつれ思わせぶりな演出が増えていき、同時に他愛のない会話は続き、ここでゲラゲラ笑っていても次の瞬間に絶望的なことが起こるのではないかと言う不安が湧く。よって自分の感情を素直に出せなくなり、どんどん無表情になる(笑)。この地域はガスの実験場になりました、数日後から実験は始まります、と言っているのに、舞台上にスモークが流れ始めたので「まさかもうガスが撒かれ出していて、全滅?」「一刻も早く皆この場を離れてほしい」と言った心配でおろおろし乍ら観ていました。この手の演出はケラさんよく使うんですが、今回はまんまとやられたなー。それも楽しめたと言えばそう。

問題を沢山抱え乍らも、膠着から脱け出すことを選んだひとたち。そして言わない優しさより言う優しさ。最後の最後迄ケラさんは迷ったのだろうが、老夫婦の会話に未来を託した。それは心に火が灯るようなものだった。どんな時でも、どんなことが起こっても、この強さが人間にはある、それを信じたい、と思った。

06月23日(水)
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