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西方見聞録
by マルコ
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■書評:「歴史を見つめる:日韓の大切な人たちとともに」宮内秋緒
韓国の歴史教育を「反日教育」という言葉で表す人もいるが、近現代史を学べばそこでは当然20世紀前半の50年近い日本による植民地化の歴史はメインテーマとなる。そこで日本帝国主義による加害の歴史を学ぶのは、必然ではないか?例えば原爆の恐ろしさを子どもたちに伝えるのは「平和教育」であって、「反米教育」などという浅いものではなく、核なき世界を実現するための世界中の人々にとって普遍的に必要な教育であるように、植民地として他国を蹂躙する行為は2度とおこなわれてはいけないことであるという認識に立てば、20世紀前半の日本による朝鮮半島植民化の歴史をまなぶことは、世界の人々にとって普遍的に必要な「反植民地主義教育」と、とらえることができるだろう。それを「反日教育」と位置付けるのはあまりにも浅薄だ。
宮内さんは日韓の友とともに「反植民地主義的」な観点から歴史を見つめ、双方にわかりやすい言葉でその思いを伝える。一方で日本にルーツを持つお子さんがクラスメートに「日本人は悪い奴」といじめられれば、国の歴史を個人に負わせる非を学校側と話し合い、クラスメートから娘さんへの謝罪の場を設定して解決に導く(本書p.150)。宮内秋緒さんが韓国で子育てをする中で、必要だった「歴史を知り、思いを伝える」ことが、彼女の周囲の人と本書を手に取る人に、日韓両国の相互理解のための旅を始める切符を手渡しているのである。
初出:兵庫県在日外国人教育研究協議会機関紙「ともに、、、」143号掲載http://kengaikyo.sakura.ne.jp/tomoni141150.html#143
11月18日(金)
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