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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■灘中学の数学を見て・・・・




 中学入試が終わって新聞に灘中学の数学の入試問題が出ていた。小学生が受けるから正しくは「算数」と呼ぶべきだろう。高校で理系クラスにいた自分はほとんの問題はとりあえず解き方は思いつくのだが、その膨大な問題を時間内に解き終えることは無理だ。国語や英語なら勝負になっても、算数に関しては灘中学の合格者に自分は遠く及ばないと痛感したのである。これを突破できるような子たちが灘に入学するのかとオレは唖然としたのである。

 南河内のド田舎の,しかも露天商の子に生まれた自分にとって「学習塾」なんて全く無縁の世界だったし、周囲ではそろばんやお習字を習ってる子は居たが、進学塾なんて世界があることも、中学受験ということも全く考えなかった。高校受験がオレの最初に戦った「お受験」だったのである。

 公立中学で成績がクラスで1番なら地域で一番レベルの高い高校に進めた。そういうわけでオレは地元の公立高校に進学し、そこで一度は落ちこぼれ深く潜行したものの、目標を決めて正しく勉強するようになってからは成績も上がって、現役で京都大学文学部に進むことができた。理系では通用しないような数学力でも、文系の受験生相手なら無双できるレベルだった。高校数学で微分や積分を知った時に世界が広がったような気がしてすごく数学の勉強が面白くなったことを思い出す。数学Tを習っていた頃は苦しんだ関数の問題がサクサク解けるようになり、定期試験で100点満点を取れたと思ったのにたくさん減点されていて悔しかったことなんかを今でも覚えている。

 もしも自分が金持ちの子に生まれていて、小学生の頃から進学塾に通い、中学受験していたら全く違った人生があっただろう。灘中学に入学して学者の世界に進んでいたかも知れない。自然科学系の研究者になっていた可能性は高いと思う。星を見るのが好きで、星座早見盤を見ながら夜空の星を確認したり、わざわざ夜更かしして観測したことを思い出す。日本から見える一等星はすべて覚えてるので、夜空を見て全部答えることが今でも出来る。カノープスはまだ目視観測できていないので旅行先で観られればいいなと思う。

 中学受験しないで公立中学・高校に進んだから自分は広く世間を知ることが出来たような気もする。小学校、中学校の同級生の中にはほんまもんのヤクザになった人もいれば、ビジネスの世界で成功している人も居るし、外国でCEOになった方も居る。ただ、大多数はごく普通の市民生活を送っている。家庭を持ち、子育てに悩み、そして健康を気遣う日々である。

 自分は今の人生を積極的に選んだのか、それともこの人生しか選べなかったのか、いったいどちらなんだろうかと人生の終盤にさしかかってオレは時々ふっと考えてしまうのである。

 灘中学の入試問題をたやすく解いてしまう恐ろしく賢い子どもたちが、その自分の能力をこれから何のために誰のために使おうとするのか、どんな人生を手に入れようとしているのかオレは知りたいような気がする。オレが直接知る何人かの灘出身者は誰もものすごく賢く、そして人間的魅力に溢れた素敵な人である。小学6年生にしてあの問題レベルをたやすく解いてしまうような人たちだったということは言うまでもないわけだが。

 類い希な能力を持つ人はどうかそれを他者のために、人類の幸福のために、世の中を少しでもよくするために使って欲しいと思うのだ。どうして世の中の「賢いはずの人たち」がこんなにも「悪」なのかとオレは悲しくなる。正義や公正といった価値が世の中から失われつつあることを悲しんで欲しいのである。

 トランプのようなカネと権力の亡者がアメリカ大統領となり、それをアメリカ国民が支持していることは決して世界を幸せな方向には導かない。オレはそれを危惧すると共に、未来ある賢い子どもたちが未来に人類にとっての最適解を見つけてくれることを願うのである。


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01月22日(水)
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