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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■よいエンジンとは何か?




 就職したばかりの頃、オレは日産のパルサーEXAという2ドアクーペに乗っていた。パルサーは日産から出ていたFF車で、4ドアセダンもあれば3ドアハッチバックもあったが、EXAという車種は後部に独立したトランクを持つ2ドアクーペだった。確か1.5Lと1.3Lの2種類のエンジンがあったと思う。EXAには当時はやりだったリトラクタブルライトが搭載されていて、スーパーカーみたいでカッコいいと自分では思っていた。

 パルサーEXAに搭載されていたのはE15Eという形式のエンジンで、自然吸気だがよく回り、レスポンスもよかったので高級車と信号で並んだときはついつい発進加速をいちびったものである。三菱スタリオンとか、トヨタ・セリカとかがライバルだった。燃費もよくて貧乏だったオレの財布に優しかったことを思い出す。通勤に使っていて実用燃費が13.8q/L程度だった。今のようなハイブリッド車もなく、いすずが発売していたディーゼル乗用車に人気が出るような時代で、低燃費技術というものがまだそれほど進化していなかった頃である。確かダイハツのシャレードというリッターカーが燃費を売りにしていてそれでも19q/L程度だっただろうか。あと、50万円以下で買えるスズキアルトもあった。

 11.7万キロ走ったパルサーEXAからオレは二代目に進化した日産EXAに乗り換えた。CA16DEという1.6LのDOHC16バルブのエンジンが搭載されていたのだが、体感としてそんなに速くは感じなかった。車両重量がずいぶん重くなったし、燃費もかなり悪くなったからである。高出力かと言えばそうでもなく、やたらとエンジン音がやかましく、すべてにおいて中途半端だったのだ。それでも通勤に使っていたので20万キロ以上走ることとなった。カーオーディオはまだカセットテープのデッキだった。燃費は10キロ/q程度で、1600なのにこんなに燃費が悪いのかと悲しくなったほどである。

その次に三菱FTOに乗ることとなった。FTOに搭載されていたのは6A12という形式のV6・DOHCエンジンである。それまで乗っていたEXAと違って低回転でもトルクが太く、「ずっと高級車になったな」という実感が湧いた。こちらは最終的に22万キロも乗ることになるので、オレが江草乗と名乗ってるのもおかしいのである。ただ、FTOをペンネームにするいいネーミングを思いつけないのである。FTOはとてもいいクルマだったと思う。できることならもっと長く乗っていたかったし、MT5速のFTOは珍しかったようで、中古車市場でも希少だったそうである。排気量はアップしたが、EXAよりも燃費はわずかによかった。ただハイオク仕様だったのでガソリン代はかなりかかったのである。オレが手放した後も赤いFTOは誰かが乗ってるのだろうか。もしかしたら海を渡ってるかも知れない。FTOでオレがどんな最高速を記録したのかはあえてここでは書かない。高速になればなるほど路面に吸い付いたような感覚でハンドルがどっしりと安定する、そんな気持ちいいクルマだった。

 ホンダS660については何も語ることはない。ただ運転することそのものが娯楽のようなクルマだったと言っておきたい。

 そして今、オレはダイハツロッキーに乗っている。ロッキーに搭載された1KR-VETというエンジンは名機だと思う。1Lでありながら1.5Lクラスの出力やトルクを発揮するいわゆるダウンサイジングターボである。アクセルに反応して気持ちよく加速してくれるし、もちろん燃費もいい。高速では20q/Lくらいで走ってくれるから旅行にも役立つ。ダイハツのこのエンジンは他にもいろんなクルマに搭載されているのだが、コンパクトで高性能という点でいかにも日本的だと思うのである。実用性ということを考えたときに必要にしてかつ十分な機能を満たしている。

 よいエンジンとは何か。自分が所有したクルマを代々振り返った時にどれがよかったかなと改めて考えると、パルサーEXAに搭載されていたE15Eと、ロッキーの1KR-VETである。スペックが高くて高性能だから無条件によいというものでもない。20歳過ぎからずっとクルマを運転してきてほぼ40年すぎて改めて思うのである。


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06月13日(月)
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