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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■教師残酷物語


 かなり昔に放送された番組で「教師びんびん物語」という人気ドラマがあった。そのドラマを見て教員を目指した人も多くいた。しかし、現実の教員の世界はブラックな職場で低賃金で長時間労働が横行している大変な世界だった。学校をただのサービス業としか考えてない勘違いした親も増え、「子どもが勉強しないのは学校が悪いから」「いじめが起きるのは学校が悪いから」という趣旨の馬鹿発言をする似非評論家のせいでますます教員はつらい職業となってしまった。

 非正規雇用の教員が占める割合も増加した。特に大阪府はその傾向が強い。橋下徹が知事に就任して行った「財政再建」とは、公務員の給与を減らすことがメインであり、それは府民にも支持され、当然のことだが教員の給与も下げられた。給与削減だけではなく待遇も悪化した。維新府政が継続する中でそうした状況は継続することとなった。中でも理不尽な待遇に苦しむのが非常勤講師の地位にある人たちである。

 4月の授業再開が中止になった結果、非常勤の教員は無給のまま放置されるのである。学校が再開するまでの間をどうやって食いつないだらいいのか。もともと低賃金で働いていてほとんど貯えがない上に、あてにしていた収入が突然なくなるのである。それも全く自分に責任がないのにいきなりカットされるのだ。どうやって食べていけばいいのか。自粛の嵐が吹き荒れるいまの社会状況で短期間だけ働く場所が簡単に見つかるのか。

 「わたしたちの生活を守ってください」という非常勤雇用の方々のこの切実な訴えに対して、府教委の返答は「身分は保障する」だった。あんたたちは「轍鮒の急」という故事成語を知ってるか。わだちにできた水たまりで干上がりそうになってる鮒が旅人にわずかな水を求めたとき、旅人は数日後にたくさん水が手に入るからと答えるのだ。その時には鮒はもう死んでいるのである。数か月後の身分保障ではなく、今のゼニが必要なのだ。そんな冷たい答えができるのは、役所の連中が現場で使い捨てられる教員の気持ちを少しも理解していないからである。

 オレはかつて大阪府立高校の教員という身分を捨てた。それは大阪府教委が教員をちっとも大切にしてくれない組織であると看破したからだ。こんなところでずっとやっていけないと思ったからだ。その選択は正しかったとオレは今でも思ってる。オレを迎えてくれた私立学校は、少なくともオレが存分に力を発揮する環境を用意してくれたし、公立高校にいたら出会えなかったような多くの優秀な生徒を教えることもできた。東大や京大、阪大といった難関校に入学した多くの教え子と出会えたことは教師としてのオレの宝物のような大切な思い出である。

 授業がないから給料も出ないというのは中学や高校の非常勤講師だけではない。大学の非正規雇用の教員も同様の状況に追い込まれている、連休明けにならないと授業が始まらないからと非常勤講師の4月分の給与を支給しない大学が多いと聞いている。その収入がないと家賃が払えない人もいるのである。

 教育というのは国家の未来を築く大切な営みである。ところがその現場の教員たちは過酷な労働条件の中で苦しんでいて、その中でも非正規雇用の人たちは満足な収入保障もないままに放置されている。政府は教育現場の非正規雇用の人をいますぐに助けるべきである。加計孝太郎のようなアベトモ学園経営者には税金から数百億のゼニが簡単に出るが、そのゼニは政治家に還流され、学生や教員のところにはほとんど回ってこない。 

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04月06日(月)
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