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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■公立図書館の質の劣化について



 京都大学名誉教授だった桑原武夫さんの蔵書が寄贈されたのに、放置されてそのまま廃棄されたというニュースを読んだ。京都新聞の記事を引用しよう。


桑原氏蔵書を6年間放置、確認せず廃棄 京都市
京都新聞 4/28(金) 23:00配信
 京都大名誉教授でフランス文学者の桑原武夫氏の遺族が京都市に寄贈した同氏の蔵書約1万冊が、遺族に無断で廃棄されていた問題で、蔵書は向島図書館(伏見区)で他の不用本と同じ部屋で段ボール箱に入れられたまま、6年間放置されていたことが28日、分かった。市教委は「保管場所がなかったから」としているが、市の図書管理のずさんさが明らかになった。
 市教委によると、1988年に寄贈された蔵書は市国際交流会館(左京区)で保管され、定期的に一般公開されていたが、2008年、京都に関する資料を収集する役割を備える右京中央図書館が開館した際に移動させた。同図書館では、遺品などを展示する桑原武夫コーナーに蔵書の目録も置き、「希望者は閲覧できる」としていた。
 しかし実際には、09年に蔵書を向島図書館2階に移動し、段ボール箱約400箱に入れたまま整理せず、不用本と一緒に置いていた、という。
 15年、同図書館2階を改修した際、箱の中身を知らない市教委職員が「廃棄したい」と当時の右京中央図書館副館長(57)に相談。副館長は、寄贈書であることを知りながらそれを伝えず、処分を許可した。最終責任者である市教委施設運営課長は、中身を確認せず、他の不用本とともに廃棄を決め、蔵書は古紙回収に出された。
 市図書館では年間約10万冊を廃棄している。主に、痛んだ本や紙が劣化した本、冊数が多い本が対象で、廃棄は副館長が判断し、施設運営課長が最終決定する規則だが、実質は副館長に任されていたという。
 図書の取り扱いについて、京都府立図書館(左京区)では、すべて書架に入れて保存し、原則的には廃棄しないが、紙の劣化などで貸し出しに耐えられない本を廃棄する時は、複数の管理職や館長が協議して決めるという。同館は「本の価値を最終責任者の館長が判断しないまま廃棄することはあり得ない」と話す。
 市教委や右京中央図書館には同日、この問題について50件以上の苦情が殺到した。市教委は「保管の仕方が悪かったと言われても仕方ない」としている。

 京都大学を卒業したオレにとって、桑原武夫さんというのは雲の上のようなお方である。その寄贈書というか、蔵書というのは氏の学問体系を理解する上での貴重な資料であり文化遺産である。そんな大切なモノを「古紙回収」に出してしまったこの馬鹿職員がもたらした損害というのは計り知れない。減給程度の懲戒で済ませられるものではないのである。失われた価値はプライスレスなのだ。

今回の事件の背景にあるのは、公立の図書館の職員の質の劣化であるとオレは思っている。先日、手取り10万いかないという図書館司書の給与の低さがはてな匿名ダイアリーに投稿されて話題になったが、そんな待遇を嫌気してやる気のある優秀な人がどんどんこの世界から去っていってるのである。「司書」という専門職をどうしてもっと評価してくれないのだろうか。

 オレは本が捨てられない。だからオレの家には本がたくさんある。死ぬまでにきちっと整理して、いろんな全集とかはちゃんと価値のわかる人に譲ろうと思っている。ブックオフに売っても二束三文だからだ。オレのような無名人の蔵書など松原市は寄贈されても困るだろうし、生きてるうちに決着を付けたいと思っている。


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04月28日(金)
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