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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■クルマを壊す馬鹿芸人をテレビに出すな



 「ポトラッチ」という北アメリカの先住民族の文化がある。ウィキペディアの記述によるとこれは裕福な家族や部族の指導者が家に客を迎えて舞踊や歌唱が付随した祝宴でもてなし、富を再分配するのが目的とされる。「ポトラッチ」は子供の誕生や命名式、成人の儀式、結婚式、葬式、死者の追悼などの機会に催された。太平洋岸北西部先住民族の社会では、一族の地位は所有する財産の規模ではなく、「ポトラッチ」で贈与される財産の規模によって高まったという。ヨーロッパ人と接触する以前は、保存性のいいキャンドルフィッシュ(Thaleichthys pacificus)の油や干物、カヌーが贈与され、特に裕福な者のポトラッチでは奴隷が譲与されることもあったという。

 白人との交易が活発になると、先住民族社会の富の偏在が先鋭化し、また疫病の流行により部族内の重要な地位に空きができたことから18世紀後半から19世紀初めにかけて「ポトラッチ」のインフレーションが起こった。食料では、干物の他に砂糖や穀粉が分配されるようになり、毛布や金属製品、等価交換の媒体として用いられる装飾された金属、現金までが贈与された。等価交換の度が行き過ぎて、片方が貴重な品を破壊するともう片方もそれと同じ価値の品を破壊する、というふうに、分配された品物が受け取られた直後に破壊されることもあった。クヮクヮカワク族などでは社会的地位をめぐりポトラッチ開催の競争が起こった。

 この「貴重なものをおたがいに破壊する」という馬鹿馬鹿しい儀式の部分を取り上げて誇張したのがかんべむさしのSF小説「ポトラッチ戦史」である。オレがこの「ポトラッチ」という習慣を知ったのはこの小説からだ。

 さて、こともあろうに日本のお笑い芸人がこの「ポトラッチ」まがいの行為を行った。壊されたのは2000万円もするスーパーカーのBMWi8である。7月25〜26日に放送された「FNS27時間テレビ」の番組内で、平成ノブシコブシの吉村崇と徳井健太が登場、そこで免許取り立ての吉村が洒落で購入した愛車であるBMWi8が公開され、加藤浩次に「吉村、バカやろうぜ!」と乗せられた吉村はルーフに登ったりフロント部分を蹴ったり、相方の徳井と一緒にフロント部分にダイブしたりした。その結果フロントガラスにヒビが入ってしまったのである。

 その時点でさすがに怖くなったのか徳井は青ざめたが、一方で吉村は「最高にばかやったぜ!」と叫び、再び愛車にキックしたという。はっきり言おう。こんな超弩級のバカは高級車に乗る資格はない。おまえは自転車で十分だ。おまえのようなクルマを愛せない人間に所有されるクルマはかわいそうだ。オレは心の底からそう思うのである。

 オレはクルマが好きだ。自分のクルマは常に大切に扱うし、傷をつけたくないから洗車も必ず自分の手でする。他人にぞんざいに扱われるのに耐えられないからだ。ガソリンスタンドのアルバイトの不注意で傷を付けられたりされたくないからだ。自分のクルマを愛せないような人間にはクルマを所有して欲しくないと思うし、特にオレがとても買えないような高級車のドライバーがクルマを粗雑に扱ってる姿を見ると悲しくなる。

 吉村は自分のBMWi8を壊してみせることで何を言いたかったのだろうか。オレはこんな高級車でも壊せるような金持ちだと自慢したかったのか。それともただ単に馬鹿だっただけなのか。どちらにしてもそれがとても不愉快な行為であるとオレは感じたし、多くの視聴者も同様に思っただろう。もしもオレがBMWのディーラー側なら、そんな車を修理で持ち込まれたらものすごく気分が悪いだろう。そして言うだろう。「この修理は車両保険は適用できませんよ」もちろん自費で何百万もかけて直すことになるわけだが、もしかしたらテレビ局が負担するのだろうか。そんなゼニは自分に払わせろよとオレは言いたいのだ。


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07月30日(木)
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