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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■京都「ホワイトハウス」の思い出

 オレはオムライスが好きだ。おっさんなのにオムライスが好きということはなんだか変かも知れないが、とにかく好きなのである。大阪にはオムライスのおいしい店が3つある。「北極星」「明治軒」「中央公会堂食堂」である。この3つはそれぞれに味も違うし、それぞれの個性があるので是非とも食べ比べて欲しいのである。

 「北極星」がすごいとオレが思うのは、中に入ってるケチャップ味のごはんの部分を注文の都度作ってるところである。白ごはんの状態から具材を入れてフライパンでいためて中味ができあがるのだ。しかもカウンタータイプの店では目の前で調理しているところを見ることができるのである。ついついその職人的な技に見とれてしまうのである。とにかくオレの一押しは北極星だ。どうして失敗しないのか、どうしていつもおいしく作ることができるのか不思議なのだ。ただ、値段の割に少し小さいと思うこともあるのだ。それが欠点と言えば欠点だが、店によって大きさは微妙に違うのかも知れない。淀屋橋で喰ったときには「ええっ、小さい!」と思ったのである。

 「明治軒」と「中央公会堂食堂」はどちらもよく混んでいる。そしてどちらも車をどこかに駐めてからいかないといけないので(これは「北極星」も同様だが)、ちょっと面倒なんだが、やっぱり「久しぶりにオムライス喰いたいな」と思ったら行ってみたくなるのである。

 ファミレスのメニューに出てくるオムライスはみんなだめだ。何よりオレが許せないのは、中のごはんがちゃんと玉子で包まれてないということなのである。上に平べったい薄焼き玉子をのっけてあるだけのものをオレは「オムライス」とは呼びたくない。そんなものには「オムライス」を名乗る資格などないのである。オレは「オムライス」の定義として、「上も下もきちんと薄焼き玉子に包まれていること」というのを提案したい。つまり、お皿の中で中味のごはんが直接お皿に接触してるものはオムライスと名乗ることを禁止すべきなのである。そういうのは「玉子乗せピラフ」とか「玉子乗せ焼きめし」というふうに名前を変えるべきである。

 また京都には「オムラハウス」というオムライス専門店があって、季節のオムライスということで松茸のオムライスや竹の子のオムライス、湯葉のオムライスなどがあるが、値段もかなり高い。そういう贅沢なのは確かにたまに食べるにはいいが、ふだんの食事で食べるものではないのである。なんだか違うのだ。オレが求めてるのは、もっとありふれたオムライスなのである。

 子どもの頃、家族でレストランに行くと、好き嫌いの多かったオレが必ず注文したのが「オムライス」だった。その頃から食べ続けているわけだから、オレはもう50年近くオムライスを食べ続けていることになる。その中には涙が出るくらいにおいしかったオムライスとか、当時の恋人と食べた思い出のオムライスとか、学生時代の空腹を満たしてくれたオムライスとか、いろんなオムライスがある。

 京都で一人暮らしをしていた頃、近所にあった「ホワイトハウス」という名の定食屋でよく注文したメニューもオムライスだった。店主のおじいさんが作ってくれたその味は絶品で、大学を卒業してからも何度か食べに行ったことがある。たぶんオレが一番好きな思い出のオムライスはその店のものである。腹が減ってるときは、トンカツ定食とかハンバーグ定食を食べることもあった。いつもごはんを超大盛りにしてくれたこともなつかしい。そして、店はあまりはやってなかったのでお客はオレ一人ということも多かったが、そんな時は珈琲を出してくれて、ゆっくりと店主の加藤さんと話をしたりした。奥様とお二人でお店をしておられたのである。

 それから長い月日が経ち、京都に行った折に久しぶりにその店のあった場所を車で通ると、もうそのレトロな雰囲気の建物は存在せず、そこにはふつうの一戸建ての家が建っていて、その表札は店主のおじいさんの姓だった。「ああ、もう誰もこのお店を継がなかったんだな」とオレはせつなくなったのである。最後に店に行ったのはもう20年近く前である。かつて京都大学に通い、農学部のすぐ北側の下宿密集地域に住んでいた人ならあの「ホワイトハウス」という定食屋に行ったことがある人も多いはずだ。


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06月05日(木)
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