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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち12(共栄タンカー)
 過去のハメこまれた人たちシリーズを読む。

 2007年4月から6月にかけて、なぜか突然の海運株ブームが起きた。原油高で燃料費高騰は海運業界にとっては逆風のはずだった。ところが中国の経済発展による需要の増大や、用船料の値上げなどで燃料分を穴埋めできる見込みがたち、各社が好決算を次々と発表したことも重なったのである。3月19日に安値890円をつけた日本郵船(9101)は6月5日には1227円まで上昇したが、小型株の値上がりはもっと激しかったのである。乾汽船(9113)は4月6日には784円だったが、6月4日にはなんと1994円と2.5倍の値上がりを見せたのである。他にも川崎汽船(9107)、飯野海運(9119)、第一中央汽船(9132)などもそろって値上がりした。海運株のめぼしいところが値上がりしてしまって物色対象がなくなると今度は関西汽船(9152)のような好景気に関係ない内海航路中心のところや、佐渡汽船(9176)のように債務超過の会社まで暴騰した。とにかく海運株と言うだけで猫も杓子も上がる状況だったのである。

 さて、その海運株ブームに出遅れた銘柄が一つあった。それは共栄タンカー(9130)だ。過去に何度か大相場を作ったことのある往年の仕手株である。4月2日に295円だった共栄タンカーは5月9日にいったん407円まで上昇したがそこから失速し、5月21日にはなんと283円の安値を付けた。その407円までの上昇の原因は個人投資家に情報を無料メールで配って買い煽り、じわじわと値上がりさせて売り抜けたとある投資顧問の仕掛けだったのである。その投資顧問は売り抜けてから「今回の共栄タンカーはこれで終了」というメールを配布した。すると共栄タンカーを空売りしてそこからの値下がり益を確保しようとする個人投資家がどんどん増えて、その結果283円まで売られたのである。

 「空売り」というと昔は相場師や機関投資家しかやらなかったが、ネット取引で信用取引を利用する個人投資家が増えた結果、この空売りという危険な行為にもまた個人投資家が短期での大きな利益を求めて群がるようになったのである。共栄タンカーが407円から283円まで値下がりするのに要した日数わずか12日である。たとえば400円で1万株空売りするのに必要な委託保証金はマネックス証券の場合120万円である。それを300円で買い戻せば手数料を計算に入れなかった場合100万円の利益が出るわけだ。元金120万円が12日後に220万円になるという短期でのコストパフォーマンスの高さに個人投資家が群がるのも無理はない。しかし、この暴落と大量の空売り発生を見て一発仕掛けようとして虎視眈々と狙っていた誰かがいたのである。その誰かが個人なのか、機関投資家なのか、あるいは複数の名義に分散させて名前が出るのを隠した大物仕手筋なのかはわからない。もしかしたら選挙資金獲得用に政治家が暗躍したのかも知れない。

 5月28日298円(+3)、29日306円(+8)、30日315円(+9)と少しずつ共栄タンカーの株価は上昇し始めた。しかし出来高はわずか30万株程度でありさほど目立つ動きではなかった。突如仕掛けてきたのは5月31日である。その日325円(前日比+10)で寄りついた共栄タンカーはなんと395円(+80)のストップ高を演じたのだ。その日の出来高は657万8000株だった。しかし問題なのはこの日に100万株以上の新規の空売りが発生してしまい、かなり売られすぎて株不足の状態になってしまったことである。ここで空売りした個人投資家たちにしてみれば「前も407円から下げた。上がってもどうせ400円くらいだろう。ここは空売りで狙おう」と思っていたはずである。6月1日に発表された5月31日分の逆日歩は0.55(55銭)だった。この逆日歩というのは空売りしている人が払わされる品貸し料である。1万株の空売りをしていれば一日あたり5500円払うことになるわけだ。株不足が進めばさらに値上がりすることになるし、火曜日に空売りを持ち越した場合は逆日歩を3日分(週末を含むため)払うことになる。約定の日付と実際の受け渡しの日にズレがあるからこのようなことが起きるのである。


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06月11日(月)
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