ID:41506
江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち8
過去のハメこまれた人たちシリーズ
エネサーブ(6519)という会社がある。オンサイト発電という事業をメインにして、中小企業を中心とする顧客の敷地内に自家用発電装置を設置して電気や熱を供給していたのである。電力使用のピーク部分をオンサイト発電装置でまかなうことによって、契約電力を削減することができ基本料金が安くなる上に、低コストで発電することで電気料金も低減できるということをうたい文句にして契約を増やしてきたのである。
このオンサイト発電は燃料油の高騰がモロに響く。原料油であるA重油が高騰すると、通常の電力会社からの電力購入に比較したコスト競争力が失われてしまうからである。エネサーブにとっての損益分岐点は原油1バレル40ドル付近であった。それを上回るともはや事業として成り立たなくなってしまうのである。実際の所、昨年からの原油高騰を受けてなんと2006年3月期のエネサーブ社の経常利益は91.5%減と前年度の1割になってしまったのである。株価もそれに連れて暴落して、2005年12月には3000円近かったのが2006年5月には1000円を割り込み、それからもジワジワと下がっていった。原油が1バレル80ドルと高騰しても、エネサーブ社はオンサイト発電を導入した顧客に契約した安い金額でA重油を供給しないといけなかったために、赤字がどんどん膨らむ結果となっていてもはや臨界点が近づいていた。
現在の原油高は一時的なものではなくおそらく恒久的なものになっていくだろう。そうなるとエネサーブは構造的な赤字体質をずっと続けることになってしまう。8月18日、エネサーブ社は大きな決断を行った。2007年3月期の経常損益を217億の赤字と下方修正し、同時に主力であるオンサイト発電から撤退することを発表したのである。撤退に伴う清算などで1576億円の特別損失が発生するが、商品スワップの解約で特別利益を1850億計上してその穴埋めをすることになった。
これは例えれば阪神電車が鉄道事業をやめて売店収入だけになるようなものであり、会社そのものの存続が危ぶまれる方針転換なのである。言わば「廃業」みたいなものである。さて、この決算発表の直前に実はエネサーブ社に関するある事件が起きていた。それは偽造株券の流通である。8月16日に報道されたこのニュースのために、エネサーブの株価は大きく下がっただけではなく、大量の空売りが発生していた。もともと業績不振で長期低落傾向に入っていたためにかなり空売りされていたのだが、この偽造株券騒ぎで急激に空売りが増えたのである。そこに一つのワナが存在したのだ。
そもそもこの偽造株券騒ぎのタイミングのよさは何だ。オレはこの事件は「空売りを増やす」という目的で仕組まれた一つの茶番だと思っている。どうして空売りを増やしたいのか。それはそこで空売りをした人をハメこみたいからである。彼らを踏み台にして株価を上昇させたいからなのである。おそらくはこの茶番は、エネサーブ株をこの後の高値で売り抜けた連中によって仕組まれていたのだとオレは憶測する。
8月17日に安値681円をつけた株価は、なぜか翌18日に急騰して746円(+65)となったが東証はそこで空売り禁止の規制を行った。その日もかなり空売りの残が増えていた。オレはこの規制によってもう後はここの株価は下がるしかないと単純に思っていた。まさかその後で仕掛けられるとは思ってもいなかったのである。週明け21日に、エネサーブ株には大量の買いが入り、突如ストップ高の846円という踏み上げ相場が発生したのだ。22日には株価は連続のストップ高である946円まで瞬間的に上昇した。空売りした人たちの多くは高値での返済を余儀なくされてしまったのである。
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10月23日(月)
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