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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち19 (全日空)
 全日本空輸(ANA)は3日引け後、公募増資9億1400万株に加え、オーバーアロトメントによる株式売り出し8600万株を実施すると発表した。今回の新株発行により、発行済み株式総数(現在25億2495万株強)は最大10億株、率にして39.6%増加する
 手取り概算額は最大で2110億5000万円。15年3月末までに、国際線ネットワークの拡充を主な目的として、省燃費機材であるボーイング787型機(787−8型機および787−9型機)を中心とした航空機購入を含む設備投資資金に充当する予定。
 3日終値は31円安の193円。大型公募増資の方針を固めたとの一部報道が先行し、株価が急落した。
[ 株式新聞ニュース/KABDAS−EXPRESS ]提供:モーニングスター社 (2012-07-03 18:04)

 NHKが増資のニュースを全日空の発表前にスクープしたのは、個人投資家を救済したいという報道側の良心か、あるいは最近の続発する増資インサイダー事件に心を痛める人からの良心のたれ込み告発があったのか、それはわからない。しかし少なくとも昼にその報道を知った全日空株主の一部は空売りすることで損害を少しでも少なくしようとしたはずである。その証拠に信用取引情報の空売り残は一気に増えている。

 ただ、個人よりもずっと早く証券会社は全日空の増資情報を入手していて、すでに大量の空売りを行っていた。野村證券は6月25日時点ですでに1365万株の空売りを入れている。株価の値下がり幅を40円とした場合、5億4600万円の利益である。7月3日時点での空売り残を見ればドイツ証券やモルガンスタンレーなども参戦しているのがわかる。6月29日に大量の新規の空売りを入れていたのである。7月2日にはゴールドマン・サックスまでも売り方で参戦しているのだ。今回の増資での幹事証券(すなわち、事前に情報を知りうる立場)である野村、JPモルガン、ドイツ銀行、ゴールドマンサックスのすべてが正式発表の7月3日よりも前に空売りを仕掛けていたのである。

 ただ何度も繰り返すが、これはインサイダー取引ではない。インサイダー取引は情報を知り得た個人を罰するものであり、証券会社がインサイダー情報で空売りして稼げるのは、増資を引き受けてくれることへの見返りである。証券会社は株を借りてきて空売りし、増資によって受け取った株でその借り株を返済する。そういううまみがあるから増資を引き受けてゼニを出すのであり、もしもそうしたうまみがなかったら増資を引き受けてくれる証券会社などない。このような増資ビジネスは海外の証券会社もやっていることである。

 全日空が今回の増資で2000億円を仮に手に入れることができたとしよう。6月21日には全日空の株価はいったん236円の高値を付けた。そのあたりで徐々に証券会社は空売りを仕込んでいたと思われる。236円時点での時価総額は約5900億円だ。今回の増資で全日空株の価値は約40%の希薄化となるので、5900億円を増加後の株数(35億株)で割れば168円という株価になる。7月4日の終値は195円なので理論上はまだ値下がり余地があるのだ。

 全日空が2000億円手に入れて、幹事証券会社が空売りで200億円くらい手に入れるとして、そのゼニは誰が負担しているかというと既存の全日空株主である。236円の株が150円まで値下がりしたとして、その86円に25億株をかければ2150億円が消えることになる。そうして既存の株主に損をさせることで資金をひねり出し証券会社がぼろ儲けする仕組みがこの「増資」という手法なのだ。しかしその増資に関する情報を証券会社ではなくて個人が手に入れて空売りをすると、証券取引法違反で処罰されるのである。なんて不公平なんだろうか。

 証券会社の外務員が個人投資家に株や投資信託を勧めるとき、資産を増やしてあげたいなどとはこれっぽっちも思っていない。適当にもうけさせて資金を増やして喜ばせておいて、最後に根こそぎもっていく(オレはそれを「はめ込み」と呼ぶ)ために利用しているだけである。だって個人投資家なんて証券会社から見ればゴミクズのようなちっぽけな存在だからだ。


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07月05日(木)
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