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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■書評『戸村飯店 青春100連発』 〜瀬尾まいこ
 本の帯には「さわやか爆笑コメディー」と記されている。しかし、それはこの作品の性格を語ってるとは言えない。ただのコメディーにはこんなに精密な人物描写は不要である。そう、彼女の描く少年の内面には驚かされるのだ。読んでると、主人公たちの考えてる心の内側が手に取るようにとてもよくわかるのである。そして、書くことを志す自分はいつも「自分はこんなにちゃんと観察して書けるのか」と打ちのめされたような気分になるのである。悩んでいたり苦しんでいたりする少年の葛藤を彼女は見事に描ききる。面白さにぐいぐい引き込まれて読んでいるうちに息もつかせぬペースでストーリーが展開し、気がついたらもう最後のページまで来ている。読み終えてしまうのが惜しくなる、そんなすばらしさがこの作品、「戸村飯店 青春100連発」の中に詰まっている。いったい何を連発するのか、それはぜひ読んで確かめて欲しい。

 そういえば川上未映子とかいう作家が芥川賞をもらった「乳と卵」という作品では、関西弁の品位をぶちこわすような変な日本語が使われていた。オレはその日本語レベルの情けなさを深く悲しんだものである。なんなんだこの饒舌体もどきの超悪文は!と嘆いたのである。国語教師の自分にとって、とうてい国語の問題になんか使えないシロモノだったぜ。

 瀬尾まいこさんの小説の中に出てくる関西弁は、由緒正しい大阪の下町の、今の子どもたちが使っている正調関西弁である。間違いなくオレが子どもの頃にしゃべっていたようなコトバである。だからこそオレは彼女の作品を愛するのだ。まるで自分の過ごしている世界をいとおしむように。そしてこんなすてきな物語を紡ぐことのできる方にあこがれるのである。

 瀬尾まいこさん、いつかあなたに直接本の感想を話したいです。




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07月02日(水)
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