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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■派遣労働という名の現代の奴隷制度について
 黒部市に赴いた当時、男性には、親の仕送りから自立する“社会復帰”への願いがありました。高校卒業後の長時間労働から、二十一歳で、うつ病を発症。完治を待たずに再就職しますが、三十歳のとき、約三カ月の住み込みの請負労働で病気を悪化させ、治療入院などで二年ほど仕事から離れていました。
 社会復帰の願いもむなしく、相談に訪れたハローワークでは、男性の病気や職歴の多さを理由に紹介を断られました。
 「まともに取り合ってもらえませんでした。追い詰められていました。請負の世界しか、受け入れてくれるところはありませんでした」と男性。
 地元に戻った男性はいま、生活保護を受けて暮らしています。
 急成長を続ける請負・派遣業界。その陰には、正規採用の門を拒まれた多くの若者たちの過酷な労働があります。
 「正社員で働ける道は閉ざされてきています。働こう、仕事を探そうと思っても希望がない。企業はまず、正規雇用を考えてほしい」

 この記事からわかることは、日研総業というこの派遣会社がかなり劣悪な環境のアパートに派遣労働者を住ませ、給与の中からさまざまな名目でのピンハネを行い、実際に手元にはわずかしか残らないような搾取を行っていたということが伝わってくるのである。このように搾取の対象となる派遣社員のような非正規雇用の従業員は年々増加しているのだ。

 2001年からの5年間で大企業は正社員を271万人減らす一方で、非正規雇用の授業員は280万人増加している。その結果大幅な人件費の削減に成功した。5年間で総人件費は8兆円減少し、大企業の経常利益は10兆円増加しているのだ。利益の増加の8割はただ単に人件費を削っただけなのである。なぜ景気が悪くなったのか。なぜ若者に車が売れなくなったのか。もうはっきりしてるじゃないか。大企業は人件費などを切りつめすぎたのだ。その結果、本来所得として分配され、消費に回るようなお金が企業の側にため込まれ、結果として景気を悪くしたということなのだ。

 ワーキングプアと呼ばれる人たちは、将来の希望を見いだせないまま働き続けている。いくら働いても収入は増えず、結婚して家族を養うだけの蓄えを得ることもできずに年齢を重ねていく。病気になったりして収入が途絶えれば、最後はホームレスや生活保護が待っているのである。

 このような状況を打破する方法は一つしかない。それはこの「派遣会社」という存在を非合法にしてしまうことだ。企業は直接雇用(正社員、期間工、アルバイト・パート、嘱託社員)以外の雇用形態を取ってはいけないこととし、グッドウィルやフルキャストがやってるような人材派遣業そのものを禁じてしまうのである。そうすれば給与の中間搾取(いわゆるピンハネ)もなくなるわけで、少しでも現在、派遣社員として働く方々の生活を向上させることができるはずだ。

 小林多喜二の小説「蟹工船・党生活者 (新潮文庫)」が今よく売れているという。ワーキングプアの若者たちはそこで描かれる搾取される労働者たちの姿を自分たち重ね合わせているのかも知れない。

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06月12日(木)
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