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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち12(共栄タンカー)
さて、ストップ高の翌日、売り方は不安な一夜を過ごしたわけだが、翌金曜日、共栄タンカーは寄り付きこそ高かったもののそこから下げ、いったん前日比マイナスになって387円まで下げた。「やっぱり400円は越えない!」と安心した売り方はさらに新規の空売りを入れた。しかし11時に発表された逆日歩(5月31日持ち越し分)は1.5円に上昇していた。その日の引け値は402円とわずかに400円を越えた。引けに掛けて買われたからである。売り方の一部には警戒して返済する者も出てきた。その時に大事をとって返済買いして損切りしておけばその後全財産をなくすようなことはなかった者もいたかも知れない。悲劇はその後に起きたからだ。この日の出来高は1300万株を超えていた。その後の大相場を予感させる出来高だった。
株を買うものは財産をなくすが、株を空売りする者は命をなくすというのは昔から相場の世界でよく言われることである。買いで入った場合、損失は買った金額以内で済むのだが、空売りの場合の損失は青天井だ。読みを誤れば無限に損失が拡大していくのである。だから命をなくす場合もあるのだ。大物仕手筋の中にはヤクザの資金運用に携わる者もいるという。もしも彼らが負ければどうなるか。失敗して大きな穴をあけたために大阪湾にコンクリ詰めにされた沈められた者や富士山麓の樹海で首を吊った者も過去にいたかも知れない。相場とはそんな生き馬の目を抜く世界なのだ。個人投資家が単なるお手軽な利殖
の感覚でこんな危険な仕手株に近づいてはならないのである。空売りした株がわずか30%値上がりするだけで保証金はすべて吹っ飛んでしまうのである。
週明けの6月4日、共栄タンカーは427円(+25)で寄りついた。辺りをなぎ倒すような勢いの海運株ブームは物色対象を求めてこんな辺境の株にまでやってきたのだ。そして一気にストップ高まで押し上げられて482円(+80)で引けた。この日発表された逆日歩は1.5円(6月1日持ち越し分)である。株不足は一層進んでいる。下手をするとどんな高額の逆日歩になってしまうかわからない。売り方はどんどん追いつめられていったのである。しかし、かなり安い値段で空売りしてしまった人たちはあまり損切りして返済買いするような動きをしていなかった。まだ大丈夫だとたかをくくっていたのだろう。海運祭りはついにクライマックスを迎えていた。その掉尾を飾ったのがこの共栄タンカーの暴騰だったのである。
6月5日、492円(+10)で寄りついた共栄タンカーはあろうことか寄り付き直後に459円(前日比−23)まで売られる。誰もが「もう相場は終わった」とここで思ったはずだ。売り方はここぞとばかりに新規の空売りを入れたし、買いでこの相場に参加していた投資家たちもそこであわてて利益確定の売りを入れた。上昇相場についていけずに見事に振り落とされてしまったのである。しかし、株価はそこから急反発してすぐに500円台に乗せた。14時近くまで何度も大きく下げながらもみ合ったために「やっぱりこのあたりが頂点」と思った人は新規の空売りを入れた。この日発表された逆日歩(6月4日持ち越し分)は3円に上昇した。6月5日に持ち越せば逆日歩は3日分である。空売りが返済されて減少していない限り売り方は3円×3=9円、もしくは4円×3=12円支払わされることになるのだ。上昇を阻止したかったのか売り方はそこで買い方に投げさせようと必死の空売りを入れた。この日発生した新規の空売りは300万株を越えていたわけでそれだけ売り方が真剣に売り崩そうとしていたことがわかる。しかしその努力も空しく14時台になんと成り行きで300万株の買い注文が入った。上昇を阻止しようとして並んだ売り板は鎧袖一触粉砕され、株価はたちまちストップ高の562円(+80)に張り付いたのである。そこからは大量の買い注文が膨らみストップ高比例配分となった。もう売り方に逃げ場はなかった。返済買いして損切りしようにもあまりに買い注文が多くてもう買えなくなってしまったのである。
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06月11日(月)
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