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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■残暑お見舞い申し上げます【モン■ーターン】
2018年 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしく。
新年早々、久しぶりに新作の投稿です。と言っても、今は亡き別館(ぴくしぶじゃないよ)からの再録ですが。しかも、真冬真っ只中に、残暑お見舞いってどうよ・・・☆
実は最近「モン■ーターン」にハマられた方が、たまたまこちらの日記に来られまして。HOMEの方ではすでに発表終了になっているので残念だ、とカキコされたんで、この際だからと引っ張り出してきた次第。あいにくこの1作しかないんですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
※これは2006年の暑中見舞いとして書いたものです。今の競艇の規則とはかなり違うところがあると思われますが、ご了承ください。(レースへの選定基準とか)
※蒲生さんはともかくも、榎木の家庭環境はちゃんちゃん☆ の勝手な想像です。
んで、蒲生さんも榎木さんも、新人の頃1度はお互いの実家へ行ったことがある、
と言うオリジナル設定になってます。ご了承くださいませ。
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毎年、地元・丸亀でのお盆レースを終える頃。
久しぶりに自宅へ戻って来る蒲生秀隆を、家族や「蒲生モーターズ」従業員以外にも迎える存在があることを、知る者は少ない。
「おーお、やっぱ来とったかい。あいつもマメやのー」
それは毎年恒例、見覚えがありまくりの筆跡で書かれた、時節の便りである。
翌朝、ジワジワと滲む汗を扇風機で紛らわせながら、自室でくつろぐ蒲生。
生真面目な筆遣いのその残暑見舞いを眺めつつ彼は、十数年前の出来事に思いをはせていた・・・。
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それは競艇選手になって初めて、榎木祐介と同じ一般戦に斡旋された日のことである。
「は? ワシんとこの住所教えろやと?」
その日のレースを終え。
1期後輩の榎木と、宿舎での早い夕食を共にとっていた時だ。まじめな顔をした彼にそう、持ちかけられたのは。
「住所っちゅうてもお前、確かいっぺん、ワシんところに来たことあるやろうが」
「場所は知ってますけど、住所までは知らないんですよ」
「あー、そういうことか。けど、そないなもん知ってどうするんやー? お中元とかお歳暮とかやったら、ワシいらんぞ?」
「そういうものだったら郵送よりも、直接伺って手渡ししないと、かえって失礼でしょう?」
「・・・おのれは冗談も通じんのかいな・・・☆」
先手を打っておいて正解、と言うべきなのか。
わざわざ山口から訪ねて来る後輩の姿をつい思い浮かべてしまい、げんなりとしてしまう。
「そう言うんじゃなくて、時節の便りとかそういうの、送りたいって思いまして。蒲生さんには本栖以前から、色々お世話になってますし」
「これからも世話かけそうやし、か? にしても・・・時節の便り? 年賀状とか、暑中見舞いとか?」
「ええ。いくら支部同士が近いからって、しょっちゅう会えるってわけでもなさそうですし。
あ・・・ひょっとして蒲生さん、そう言うのは女性からしか貰いたくないとか?」
「いや、そこまでは言わんけどな・・・」
───今のは冗談なんかじゃなしに、絶対本気でそう思っとるやろ、お前・・・。
残ったコーヒーを飲み干しながら、蒲生はわざわざこの場で尋ねて来た後輩の意図に思いをはせる。
・・・確かに、場所はともかく住所は知らない、と言うのは嘘ではないだろう。ただ、蒲生の家は自営業だし、聞かずともいくらでも調べようはある。
おそらく彼は住所を直接本人に尋ねるという行為で、さりげなく「時節の便り」とやらの郵送許可を、貰いたいのではないか。
そして蒲生も、そういう後輩の配慮を踏みにじるほど、野暮でもない。
「・・・ま、ええわ。教えたるから、書くもん寄越せや」
「あ、ありがとうございます」
「ただし、ワシからの返事は期待すなよ?」
「構いません。俺が勝手に、スジ通したいだけですから」
心底ホッとする後輩の表情に、蒲生は自分の予想が当たっていたことを悟ったのだった。
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01月11日(木)
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