ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■夏の色【鳴門】
ガイ班、ネジ視点

※「みんなでごはんを食べようか」と世界観が繋がってます。時間的には「みんなで〜」の前に当たります。ネジもまだ中忍になったばかり。


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 カシャン。


「あーっ、落ちちゃった」
「テンテン、危ないから触るな。手を切るぞ」


 夏、ガイの部屋で。
 定例のカレーパーティー・・・はさすがに暑いと、それでも麺つゆだけは手作りの「素麺パーティ」をガイ班で行なう、準備をしていた時の話である。


 素麺を茹でてくれたテンテンが、さすがに汗をかいたからと、窓際で『自然のクーラー』に当たって一息ついていたのだが。

 別に彼女が触ったわけではない。単なる偶然であろう、軒先に吊るされていた風鈴がいきなり落ちたのだ。彼女が気持ちよく風に吹かれていた、そのタイミングで。

 ガラスで出来たそれは、石畳の床に落ちてはひとたまりもない。


「ああ、やっぱり紐が切れたか。いい加減古くなっていたからな」


 弟子を制し、自分で残骸を拾い上げたガイは、あまり深刻な表情ではない。寿命が来たことへの感慨こそ、ありはするが。

 
「テンテン、気にしなくていいぞ。実はこの間自分でもぶつけててな。少しひび割れてたから、いつかはこうなる運命だったんだ」
「えー、でも、早く気づいてたら、落ちる寸前にうまく掴めたかもしれないのに」
「珍しいな、テンテン。リーみたいなことを言うじゃないか」
「でも僕だと、かえってその弾みで握りつぶしていたかもしれませんけど」
「つまり、どっちみち壊れていたということだ。自然の摂理だな、うむ」
「・・・。ひび割れていたんだったら、その時点で新しいのと交換した方が良かったんじゃないのか?」


 ───いずれ壊れていたんだから気に病むな。
どっちみちテンテンのせいではないのだし───。


 そんな遠まわしの師弟の心遣いを、ネジも分からないはずはない。だから、自分まで同じような言葉をかけてもわざとらしいと、いつもの冷静な持論をぶつけたのだが。


「う・・・む。いつかは割れるんだったら、それまでは吊るしておきたくてな。
この季節になるといつも出してきていた、亡くなった親父のお気に入りだったんだ」





 ガイの家には、古ぼけた調度品が結構ある。
 いつもがオーバーアクションの上に粗忽で、割れ物をしょっちゅう壊すイメージがある師匠の、物持ちの良さがネジには意外だったのだが。
 なるほど。亡き親を偲んで、丁寧に扱っていたとすれば納得だ。


 一方、庇われる格好になったテンテンは、しばし名残惜しそうに風鈴の欠片を見下ろしている。


「でもあたしこれ、レトロな柄で結構気に入っていたんですよねー。時々風鈴屋さんが売りに来てるの見てても、こういう味のある感じの、あんまりなくって」
「それは気の毒だったな。何せ俺が物心ついた時には、もう軒先でぶら下がっていた代物だ、もうさすがに時代遅れなんだろう」
「・・・つまり結果的に、ガイは自分も時代遅れだと言っているわけか」
「ほほう、うまいことを言うじゃないかね、ネジ。ご褒美に山葵をサービスしてやろう、ほーらてんこ盛り」
「やめろ。子供か、あんたは」
「ちょっとお、やめてよ二人とも」
「何だか楽しそうにも見えますね」


 そろそろみんなで食べましょうよー、と誘うリーの声に促されて、残る3人は食卓へつこうとしたのだが。


「・・・ああ、いい風が来たな」


 すうっ、と忍び込んだ涼風におかっぱ髪をくすぐられ、ガイが思わず目を閉じる。


 リィ・・・ン・・・。


 何故だろう。
 その時ネジには、聞こえるはずのない、あの壊れた風鈴が奏でた音色が聞こえた、ような気がした。


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 古いながらも、どこか温かさを感じられる家屋。
 その縁側で、口ばかりか床も服も真っ赤にしながら、満面の笑みを浮かべてスイカにかぶりついている少年。

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08月29日(金)
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