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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■正義の味方にあやかって(仮すぴ)
仮面ライダーたちの活躍によって、悪の組織バダンが壊滅し。
人々が復興へのささやかなる第一歩を踏み出し始めた───そんなとある日の物語。
「がーん がーん がんがらがんが がんがらがんがんがーん♪」
勇ましいはずの軍○マーチメロディーに反して、どこか平和的で、この家の住人たちにはおなじみの歌が、絶好調に鳴り響く。
元は村雨邸であり、現在は地元の病院として昼夜問わず忙しい、ここ海堂診療所は今日、随分懐かしい珍客を2人、迎えていた。
「が〜ん♪ ・・・っと。ほい、おまっとおさん」
そのうちの1人───がんがんじいは、訪ねて来るなり誰も使っていなかったのをいいことに「おっ久あ。ちょい場所貸してぇな」と台所へと押し入って、何やら一心不乱に作っていたのだが。
とりあえずはいい香りが漂ってくる気配に不安半分、期待半分の面持ちで待ち構えていた住人&客の前へ、彼は大皿に盛り付けたものを掲げて現れた。
一目見て皆───絶句。
「・・・・・・」
「どや! うまく出来とるやろ?」
「こ、これって・・・お寿司?」
そう。香ばしい海苔の上に、酢飯と色とりどりの具をバランスよく並べ、巻き簾でぐるりと巻いたその料理。一般的には「太巻き」と呼ばれる、古式ゆかしき『ジャパニーズ・フード』なのだが。
「この模様・・・スカイライダー、か?」
「お、さっすが良はんv よお分かったなv」
普通、かんぴょうだの厚焼き玉子だのの切り口が見えるはずのそれは、緑を基調とした丸型の図形───ぶっちゃけ、村雨良がつぶやいた通り、スカイライダーを模した柄を、皆に見せていて。
がんがんじいは意外に、手先が器用らしい。感心した海堂肇は一条ルミと共に、歓声を上げた。
「ほお、なかなか見事だな」
「ホント、こんな綺麗なお寿司、家で作れるのね」
「えへん、褒めたって、褒めたってv」
「・・・つまり、わざわざこれを作りに、ここへ来たのか? がんがんじい」
「はいな。今日は2月3日やろ? そやから良はんたちと一緒に食べたらええなあ、思うて」
「それは嬉しいんだけど・・・でも、どうして太巻きなの? 節分に関係あるの?」
「何や、知らんのかいなルミはん。まあ、関東にも進出したん、最近やちゅう話やからなあ」
どこか誇らしげに胸を張って、がんがんじいは本日訪問の理由を主張する。
「これ、恵方巻、っちゅうねん。ワイの故郷の大阪の方でやな、その年の、歳得神がおられる方角に向こうて、太巻き1本を目ぇ瞑って無言で食べきったら厄落としになる、言われとるん。
あ、今年の恵方は北北西やから、あっちな」
そう言いつつ指し示すのに、皆は思わず釣られてそちらを見やったのだが。
「あ〜ん。・・・ふむ、この味は青海苔と、赤紫蘇・・・は目の色か? 結構食えるもんだな。んまい」
ひょい、ぱく、と。
協調性を思い切り無視した上に、住人を差し置いて盗み食い、と言う暴挙に出たのは、この日偶然居合わせた珍客その2、だった。
「あったり前や。食えるもんやないと、人前に出したりせんわ・・・って、そやなくて! 滝はん! あんさんいつの間にっ!」
「いーだろーが。食うために作ったんだろ?」
「あんさんは想定外やあああああっ! 何、そのでかい態度!?」
食べて当然、とばかりに悪びれない滝和也がさらに手を伸ばそうとするのを、がんがんじいは体を張って止める。
止めたついでに、太巻きの皿を素早くルミに手渡しておくのも、忘れない。
「何で、滝はんまでココにおるん? あんさんアメリカへ帰ったンやなかったんかいな。仕事サボっとんのか・・・あ、ひょっとしてクビになったんやったりして?」
「てめえ何縁起でもねえコトを・・・★ 厄払いしに来たんじゃねえのかよ?
これも仕事の一環だっつーの。事後処理とか、経過報告とか、事情も顔も分かってる俺の方が、何かと都合がいいだろうが。・・・しっかし、やっぱり米は日本が一番だなー」
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02月03日(金)
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