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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■世界で最も端的なる主張(モン●ーターン)
※明けましておめでとうございます。ちゃんちゃん☆ です。2007年度もどうか、よろしくお願いします。
さて、去年の3月以来の更新になりますか。今回も「モン◎ーターン」です。いちおーオールキャラもの(ただし男ばっか☆)のお笑い。某雑誌の某コーナーを見ていて、何故か思いついてしまったんであります。でもよく考えたら、競艇選手にこう言うのたしなむ余裕、あるんでしょうかね? わはは・・・。
では、後書きにて。
***********
その日。
北陸で行われていたG1に参加していた波多野憲二は、世にも珍しい光景を目にしたためつい、その場に立ち止まってしまった。
「うーーん・・・ちょお上手くいかんのお・・・」
あの艇王からでさえ「天才」と呼ばれる先輩・蒲生秀隆が、椅子に腰掛けテーブルに向かって何やら考え込んでいる姿なぞ、そう拝めるものではない。
ただ彼の、あまり深刻ではない様子からどうやら、トラブルに巻き込まれた等の悩みではないだろう。加えて今日の彼は、モーターも出ていて絶好調と聞く。先ほどのレースでもぶっちぎりの1着を取ったから、仕事上での悩みでもなさそうだし。
───そうなると、下世話な好奇心がふつふつ、と沸いてくる波多野だ。一応先輩への礼節はわきまえているつもりではあるものの、気になるのは事実で。
それとな〜くさりげな〜く話を持ち出して、深くツッコんで良いかどうか、様子を見ることにする。
「何考え込んでるんですか? 蒲生さん」
「んーー? ・・・おお、何じゃ、波多野か」
波多野の挨拶に、蒲生はいつもの人懐っこい笑いを浮かべて答えた。
「別に、考え込んどるつもりはないんやが。要は頭の体操じゃ」
「頭の体操・・・ですか?」
「そ。たまには頭働かせんと、錆付いてしまうきんの。ま、気休め程度やがそれなりに面白そうやし、やっぱ日本人は日本人らしいことを、ちゅうてなv」
そう言って蒲生が波多野に指し示したのは、さっきまで隣の椅子の上に広げられていた、とある競艇雑誌。
そのうちの1ページに「競艇川柳」と銘打たれた1コーナーがある。折り癖がついているところを見ると、蒲生はもっぱらこのページを眺めていたらしい。
───蒲生さんと川柳!? な、何かギャップが・・・。
そう思いはしたものの、心のうちを馬鹿正直に言葉にするほど、波多野も野暮ではない。だから、彼がこの場で実際に口に出したのは、まったく別の話題であった。
「あの・・・これって読者コーナーじゃないですか。選手が応募しちゃマズいんじゃ」
「投稿せんかったら別に構わんやろが。それに、客からの視点と選手からの視点っちゅうんは微妙に違うんやないかー、て思うての」
「・・・それは確かにそうですけど」
確かに、傍でただ見ていただけの頃と、実際選手になってからでは、レースやボートやペラに対する感慨が異なる。前者と後者を比較する、というのもこの際、案外良い気分転換になるかもしれない。
とは言うものの。
───蒲生さんが本当にそこまで考えて、この川柳作りに励んでいたかどうかは、相当怪しいよなあ・・・。
波多野のそんな疑惑を、どうやってか蒲生の天才的勘は看破したらしい。少々荒っぽい動作で、可愛い後輩の頭を両手で抱えにかかる。
「はーたーのー、お前、ワシがガラにもないことやっとる、思うとるやろーー?」
「そ、そそそ、そんなことありませんよお」
「ホンマかあ? そやったらお前も付き合うて、1つひねってみんかい」
「ええ!?」
先輩からの無理難題に、波多野は思わず悲鳴を上げていたが。
何故か瞬間、脳裏にふと思い浮かんだ光景があった。
「『頼むから・・・』」
「ん?」
「『頼むから 人の賞金 当てこむな』ってのは・・・どんなもんです?」
───豆鉄砲を食らった顔、と言うのは、こういうのを言うのかもしれない。
珍しく、驚いた風に目を見開いた蒲生の表情は、だが徐々に笑み崩れていった。
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01月19日(金)
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