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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■Darling(4)SD・流×彩?
※ちゃんちゃん☆は、中学校でのバスケのルールは知りません。「スラムダンク」の原作で見知った知識だけで試合を進めているので、その辺大目に見てください(汗)。
悪者を作りたくなくって、こういう話の展開にしました。まあ、若い時には色々あるってことで。
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呆然。
愕然。
今、体育館を支配している空気は、まさにそういう形容が相応しい。
バスケットの試合を見に来た誰もが、ただ1人の少年の動きに釘づけとなっていた。
「流川!」
二階堂からのパスを受け、流川は猛然とドリブルを開始する。とっさに止めようとした1人を交わし、ゴール目指して突き進む。
「くそっ!」
これ以上得点はさせない。そう思った相手チームの1人が、反則を覚悟で流川を止めに入るが、彼は既にシュートフォームに入っていて・・・。
ピィイイイイイッ・・・!
パスッ・・・。
警告の笛が鳴り響く中、そのボールはバスケットへとすいこまれていた。
「うぉおおおおっ!バスケットカウント・ワンスローだっ!」
「これであいつ、1人で20点入れてんじゃねえか!?」
「何だよ、あの11番はよっ」
誰もが流川のプレイに目を奪われている。その見事な点取り屋ぶりに。
彩子はベンチで記録を取りながら、高揚しそうになる気持ちを必死でこらえていた。
───先輩抜きで勝てばいー。
───負けねーから。
あれはこう言うことだったのだ。
流川が言ったのは決してハッタリでは無い、頑張れば届く願いだったからこそ、あんな風に口にしたに違いない。
「すごい・・・」
感嘆しそうになり、止まりかける手を慌てて動かす。
そして冷静になるために、懸命に心の中で繰り返す彩子だ。
<勝てるって分かってたから・・・だから怒ったのね? 流川は。そうよ、別にあたしに気を遣ったとか、そう言う意味じゃなかったのよね。安直に物事を解決しようとしたあたしの態度に、怒ったのよね・・・そうよね・・・?>
自惚れているな、と彩子は自分に苦笑する。ほんの少し、残念に思う気持ちはどうしようもないが。
ちょうど今、流川がフリースローに入ろうとしている。
多分きっちり決めるだろう、そう思って見ていた矢先、何故か流川の動作が急に止まった。
「?」
彼の視線は、何故かゴールポストを通りすぎた、遠いところへ飛んでいる・・・。
「流川! 試合に集中しろ! 余計な事に気をとられるな!」
が、主将・二階堂の声に我に返ったようで、すぐさまシュートフォームに入る。
スパッ、と気持ちのいい音と共に、シュートが決まる。それを確かめた上で彩子は、流川の先ほどの視線の先を辿り・・・息を呑んだ。
そこにいたのは、塚本だった。制服姿の。
どこか淋しげな目でコートを見下ろしていた彼は、こちらが自分を見ていることに気付き、バツの悪そうなな笑みを浮かべる。
そして、表情の選択に困っている彩子に向かって、口パクでこう、告げた。
が・ん・ば・れ。
それっきり、塚本はさっさと身を翻し、観客席から姿を消したのだった・・・。
試合の前半が終わった。
点差は20点。もちろん富ヶ岡中がリードしている。
エース不在で苦戦するかと思われた試合が、こうも一方的な展開になるとは予想外だったらしく、会場はどよめきを隠しきれないでいた。
ハーフタイム。
彩子がみんなに、タオルとドリンクを渡している時である。
「・・・塚本の退部届けが本日、正式に受理された」
部員全員に向かい、二階堂がいきなり爆弾発言をした。
だがこれは、まだまだ序の口だったと言えるだろう。彼が次に口にした言葉こそ、部員たちを混乱に陥れるものだったから。
「実は・・・昨日聞いたばかりなんだが、塚本は転校したそうだ。県外の中学へ、父親の仕事の関係で」
「転校!?」
「今日、ですか? マジで!?」
軽いパニックに陥った一同はそのうち、とんでもない事実に気がつく。
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09月12日(水)
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