ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■残暑お見舞い申し上げます【モン■ーターン】
・・・それにしても、一体どういう風の吹き回しなんですか? 返事を期待するな、って言ってたの、ほかならぬ蒲生さんなのに」
「んー、お前にはずっと不義理通しとったろが。いい加減10年分の義理果たしとかなイカン、思うたら、いてもたってもおられんようになってのー。
それに、そもそも暑中見舞いやって、相手の家訪ねて激励するっちゅうんが本式なんじゃろ? やったら残暑見舞いもきっと、似たようなモンや思うてな」
「激励、か。・・・そうですね」

 榎木は、言わずとも分かってくれている。蒲生の「ずっと不義理」が、SGの斡旋を断り続けていた事実を指していることを。
 だからそれ以上は特に追及せず、ただ自分を迎え入れてくれる彼の態度が、蒲生にとっては面映いながらも嬉しい限りだ。

 艇王と呼ばれ、競艇界の頂点に君臨する存在となっても、人間の根本的な性格は変わりようがないらしい───蒲生は安堵し内心、ひょっとしたらそれを自分で確認したくて、彼をわざわざ下関まで訪ねて来たのではないか、と、今更ながら思い至るのであった。

「ま、そう言うわけやから、今節も覚悟せいや」
「肝に銘じておきます」

≪終≫

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◆おまけ◆

 ところで。
 蒲生と言う男は、押しかける時も突然ならば、引き上げる時も突然と言う、実は結構思いつきで行動しがちな傾向に、ある。

「・・・んじゃ、水分補給もしたし、体も十分冷えたし、そろそろ帰るわ」

 さっきまでソファーでくつろいでいた蒲生が、いきなりそんなことを言い出すものだから、驚いたのは迎えた側の榎木の方だ。

「ええ!? 今からまた、香川までですか!? 無茶ですよ。道路ってこれからが、更に蒸すって言うのに・・・。部屋用意してますから今日は、遠慮なく泊まって行ってください。明日あさってと、特に差し迫った用事はないんでしょう?」
「そやけど、残暑見舞いの用事は済んだしのー。長居は無用じゃろ」

 そもそも、この後輩の顔を見て、来るMB記念への発奮材料にするつもりだった蒲生にとって、外泊することなど端から頭になかったわけだが。

「困りましたね・・・。今蒲生さんが車を運転すると、俺も飲酒運転幇助で捕まりかねないんですが」

 真面目なはずの後輩のその言葉に、思わず飲んでいたアイスコーヒーを噴出すところだった。
(イヤ、真面目だからこそ、厄介なことになる前に先手打ったのか?)

「・・・はあっ!? 飲酒って、ワシがさっきから飲んどるんは、単なるアイスコーヒーだけ・・・」
「確かにアイスコーヒーなんですが、さっきいれた際、ちょっと手を滑らせて隠し味のダークラムをを少々、利かせすぎまして。でも、どうせ泊めちゃえば構わないか、ってそのままお出ししたって寸法で。高性能のアルコール検知器だったら、引っかかるかもしれませんねえ。
蒲生さん、おいしいからって2杯も、飲んだでしょう? あのアイスコーヒー(にっこり)」
「・・・ちのーはん・・・」
「ワザとじゃないですって」

 とは言え、先ほどまで汗みどろだった人間にアルコールを与えれば、たちどころに体内に吸収されてしまうことぐらい、榎木が気づいていないはずはなく。

 レースの駆け引き等で分かっていたはずだが。
 申し訳なさそうに苦笑を浮かべるこの後輩がその実、十数年前よりはるかに「したたか」になったことを、身をもって知る羽目になった蒲生であった。

「・・・ま、ええわい。そン代わり、ちゃんと先輩を歓迎せえよ?」
「もちろんですよ。とりあえずまずは、さっきのお土産の西瓜、切り分けましょうか。そろそろ食べごろでしょう」

今度こそ≪終≫

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■当時のHPでの後書き■

※ある日、とうとつに「Dさんからの暑中見舞いへのお礼をしなくちゃなあ」と、フト思いまして。
まあそれ以上に、夏休み中に1本もSSを更新できないとマズいよな、と言う気持ちもあったんですが。とりあえず「暑中見舞いのお礼」がネタにならないだろうか、と思ったんです。

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01月11日(木)
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