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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■そして始まる日々(5)JOJO 広瀬康一
 ちょっとだけくすぐったい気がするけど・・・露伴先生なりに、僕を励ましてくれようとした、ってことなんじゃないだろうか。
 露伴先生の性格云々はともかくも僕が、彼のマンガの大ファンだってことを知っていたから。そして、それ以外での励まし方を、きっと知らないだろうから・・・。
 ・・・まさかとは思うけどこの原稿、僕が「ヘブンズ・ドア」をかけられて意識を取り戻すまでのわずかな間に、描き上げたとか言わないよね? だけど、『向こう1か月分の原稿を全部カンペキに仕上げて』って言ってたしなあ。


「・・・じゃ、そういうことにしておいて・・・でもいいのかなあ? 間田さんが聞いたら、羨ましがること請け合いだと思うけど」
 それ以上考えるのが恐くて、この話をこんな言い方で打ち切ったら、露伴先生はいつもの自信満々な表情に戻ってのたまった。
「羨ましがる奴は勝手に羨ましがらせておくがいいさ。康一くんは仮にもこの僕の親友なんだ、このくらいの特権は当然だよ」
 特権ねえ・・・いつもは災難の方が、多いように思えるけど。
 けれど、彼独特の照れ隠しだって何となく分かるから、僕は苦笑とも、照れ笑いともつかない表情をするのが、精一杯だった。


 その後。
 露伴先生は以前海外旅行へ行った時の思い出を、あれこれと話してくれた。
 ちょっと眉つばな「奇妙な物語」もあったけど、暖かい紅茶の入ったカップを片手に聞く話は、結構面白かった。
「まあ君みたいな現代っ子が楽しむなら、フランスのディズニーランド辺りがお似合いだろう」ってコメントを付け加えて。
 こうして聞いてると、露伴先生は人と話をするのが嫌いとは、そんなに思えない。どちらかと言うと喋りたがりなような気がする。仲が悪いって自他共に認めてる仗助くんとかを、それこそけちょんけちょんに言い負かすのが好きみたいだし。
 人付き合いが嫌いって理由で、ずっと1人でいた露伴先生。そんな彼の聞き役になってる僕は、そういう意味では役に立ってるのかな? 
 ・・・ちょっとだけ、そんなことを考えた。



「よいしょっと」
 誰にともなく、僕はそう気合いを入れて、大きな旅行用カバンを持ち上げて搭乗ロビーへと急ぐ。
 僕がこうしてイタリアへ行くことで、何か今までとは違った出会いが待っていたりするんだろうか?
 僕でなければ解決できない事件があったり、するんだろうか?(こっちは出来れば遠慮したいけど)
 とりあえず、僕は今日、イタリアへと旅立つ。期待と不安、その両方を胸の中にしまい込んで。

《終》

11月12日(月)
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