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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■夏の色【鳴門】
テンテンは包みを大事に、両手で抱えながらゆっくりと歩く。それを眺めつつやはり歩調を緩めていたネジだったが、ふと、視線の端に引っかかってくるものがあった。
緑地の球体に、ギザギサな黒い線。
水を張った水の中で、それは涼しげに浮いていて。
「・・・リー、テンテン、西瓜は好きか?」
一応、同行者の好みを聞いてから。
でないと、下手をすればあの上司と2人で黙々、と消費する羽目に陥りそうで、怖い。
ネジの問いかけに、リーもテンテンもかなり驚いた表情になった。
「え、ネジもスイカ、好きなんですか? 僕は大好きですよ」
「あたしも好きだけど・・・珍しいわね、わざわざあんたが果物買って行くなんて」
「・・・西瓜は夏の風物詩だ。お前らと折半したおかげで、そのくらいの余裕はある」
確かに嫌いなら、さすがに自分で買って行こうとはしなかっただろう。
あの甘さと瑞々しさを好いていて、それを皆で分かち合うのも悪くない、と思う自分がいる。
それに・・・。
「俺が食べるために買う場合は、どうしても小玉を選ぶしかないからな。
でも四人もいれば、それなりの大きさの西瓜を買うことが出来る。
・・・それがちょっと、嬉しい気がするんだ。子供の時以来、だから」
───今考えるに。
自分の子供時代とやらは、父親が亡くなったあの日、既に終わりを遂げた───ネジはそう、無意識ながら思っていたらしい。
それは紛れもない事実だ。少なくとも中忍ともなった己は、子供ではない。
が、自らを律する余り、いつしか四季を楽しむ余裕すら、心の中から閉め出していた気がする。
それは頑なな幼子と同じだ。口先や技術ばかりが先走り、精神の成長が止まってしまった、歪な子供。
ガイは───あの、熱血と青春とやらを体現した男は、違う。
良く笑い、良く泣き、あまりお目にはかからないけれど時々は、怒り。
まるでいつまでも子供のような言動を繰り返しながらも、体と心をこつこつと鍛え上げ、まっすぐ伸びやかに育った大人、だ。
そんな彼に何となく引きずられてか、体のどこか奥のところに忘れ去られていた何かが時々、ひょっこりと現れることがある。
知り合った当初はともかく、今のネジはそれを、あまり不愉快だとは感じない。戸惑いはするけれど。
───父さん・・・。
壊れたあの風鈴にガイが、思い入れがあったように。
ネジにも、切なさが混ざった懐かしい夏の思い出が、ある。
尊敬し、大好きだった父親と共に過ごした、幼少の頃。そんなにも長い年月は過ごしていないはずだが、その中の数少ない夏の日、大玉の西瓜を家族と食した楽しい記憶は、確かにあった。
だから。
幼きあの日のように、大玉の西瓜を皆で切り分けて食べるのが、素直に喜ばしいと思う。
ちょっとだけ笑みを浮かべながらそう言うと、連れの二人は相当にびっくりしていた。
「・・・何だ? 俺がそう思うのはおかしいか?」
「え、いえいえ、そういうわけじゃありませんよ、ネジ。
ただ、なんて言うか、その・・・ネジが嬉しい、とかそういう言葉を使うのが、珍しい気がしちゃって・・・」
「え?」
「そうそう、あたしもそう思った。どっちかって言うとネジって、否定的な言葉使う傾向あるじゃない」
「ひ、否定的?」
同僚からの鋭い指摘に、戸惑いを隠しきれないネジである。
そして、リーとテンテンはこの時とばかり、無遠慮だ。・・・いつものことだが。
「俺はそんなに否定的な言葉ばかり、使っていたか?」
「ええ」
「うん。素直じゃないなー、って、いつも思ってた」
「・・・・・・・・。そんなつもりはなかったんだが・・・・・」
無自覚な心の狭さにネジがショックを受けていると、しばらくの間ぽかん、としていたリーとテンテンはいきなり大笑いを始めた。
「ね、ね、リー。今のネジ、見た? 見た?」
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08月29日(金)
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