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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■夏の色【鳴門】
そしてその傍らで、息子の食欲に頼もしさを感じているのか、楽しそうに体を揺すっている父親。微笑む母親。
リィ・・・ン・・・。
彼らを見守るように、あのレトロな柄の風鈴が鳴らすのは、涼しげな音。
何となく、想像がつく。
あの暑苦しくも情に厚い上司が、さぞや両親に愛されて育ったのだろう、と言うことは。
そして、その両親が亡くなった際は、さぞや人目をはばからず号泣したのだろう、と言うことも。
かと思えばガイには、意外なくらい気持ちの切り替えが早いところもある。
無論、変にこだわっていては、今日まで生き残って来られなかったに違いなく、彼がそれだけの修羅場と激戦を経験してきた、猛者の証だと分かってはいるのだが。
その、ある意味でのそっけなさが、時々ネジを落ち着かない気分にさせる。
人を責めろと言うのではない。
もっと惜しんで涙したところで、誰も咎めも嘲笑もしないのに。
あの男は『そういう奴』だと、皆が分かっているのだから。
チリ・・・チリチリーン・・・。
そんな折り。
街に出ていたネジはたまたま、風鈴売りの行商を見かけた。
道端で店を広げ、風鈴をぶら下げて見せている光景は、この時期の風物詩と言っていい。既に何人かは足を止め、商品を眺めている。
それは一人でだったり、カップルであったり、はたまた親子であったりはするが、誰もが笑顔と共に。
───ガイの父親とやらも、こうやって風鈴を選んでいたりしたのだろうか。
いやあるいは、息子が生まれる前に、夫婦で眺めていたのかもしれない。
リ・・・リーーン・・・。
風鈴の音色に誘われ、思わず店へと足を向けていたネジだったが。
「ネジじゃないですか。奇遇ですね」
そこに立っていたマンセル仲間がにこやかに声をかけてきたので、反射的に回れ右をしたくなった。
「? どうしたんですか?」
「・・・いや」
別に、リーが風鈴を眺めていて悪いわけではない。むしろ、修行馬鹿と揶揄されるこいつに、風流を愛でる感性があったことを喜んでやるべきであろう。
そして、自分が風鈴を見に来たところで、何か支障があるわけでもない。
・・・が。
「ああ、ひょっとしてネジ、ガイ先生にこの間壊れた風鈴の代わりを、プレゼントしようとしてます?」
・・・こう言う事を何の臆面もなく口にする存在と一緒、という事実が、ネジに居心地の悪さを感じさせる。
───どうしてこいつは直球なんだ。あの日の、テンテンへの遠まわしな配慮は、どうして自分には発揮されないのか。
もっとも、過日の出来事は仲間に罪悪感を残さないためであって、今日の場合はむしろ、先生を気遣う弟子の好意。
それを隠す必要がどこにある、とリーは思っているに違いない。
「そ、そうじゃない。もうこんな季節なんだな、と思って・・・」
「良かったー。僕一人じゃ色々悩んじゃって」
「俺の話を聞け」
「良いのはあるんですが、あまり値の張るものだとかえって、先生に気を遣わせてしまうでしょう? ネジ、ここはひとつ二人で折半しませんか?」
「・・・・・・」
かと思えば、ちゃんと同僚にも気を回すところもあって。
ここで彼の誘いに乗れば、きっと一人で買うよりはずっと気恥ずかしくない。
「あー、何だ、二人とも来てたんだ。
ねえねえ、ガイ先生に風鈴、お金出し合って買わない?」
そのうち、テンテンまでが風鈴の音色に誘われたのか現れて、ネジにこれ以上ない口実を作ってくれたのだった。
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三人で選んだ風鈴を、割れないようにきちんと梱包してもらい、ガイの家へ向かう。元々今日も食事会に呼ばれているので、その時に渡そうとの腹積もりだ。
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08月29日(金)
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