ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
[61319hit]

■みんなでごはんを食べようか 後編【鳴門】
「あたしもー。お水もらいますね」
「俺もいい。テンテン、俺にも水をくれ」
「はいはいー」


 弟子たちのやり取りに微笑ましさを覚えつつも、ガイはカカシの皿と共に台所へと消える。
 それを見計らって、今度はテンテンが小声でカカシに声をかけた。


「あの、カカシ先生、さっき不義理、って言われましたよね? それってどういう意味なんですか?」


 ちなみに、普通『不義理』というと、借金を踏み倒すことをさす、事もある。が、今のリーたちの歳にはとっくに上忍になっていたはずのカカシに、それはありえないだろう。色々な意味で。

 カカシはしばしためらった後、何故かネジをチラリ、と見てから話し始めた。


「よくある話だよ。俺はその頃、既に上忍で、マイト親子は下忍だった。だから立場が色々とややこしくてね。ガイの親父さんはそんなことは気にしてない風だったけど、口さのない連中は当時、結構いたんだ」


 今でもそう言う奴らって、どこにでもいるけどさ、と、カカシは疲れたような口調になる。


「・・・特に俺は、自分の両親に先立たれていたから、ソッチ方面の情に訴えて便宜を働かせようとしてるんじゃないかー、なんてね、無責任なことを噂してくれたワケ。
だからガイも、俺を親父さんとの夕食に誘ってくれたの、1回だけだったよ。よっぽどひどいコト言われたんじゃないのかな」


 あの、押しが強くて遠慮を知らない風のガイが、だよ? と半分おどけながら、カカシの話は続く。


「ま、俺としてもそれで助かった、って思った時期もあるけどね」
「! どうして?」
「だから俺、両親亡くしてるデショ? だから、仲良し親子を見てると、ケッコー辛かったのよ」


 ───馬鹿なことしてたなあ、あの頃の俺って。


 珍しく自嘲気味につぶやくカカシに、ここで辛らつなことを言えるのは一人しかいない。


「お前が馬鹿なのは、いつものことだろうが」


 ガイがカレーのお代わりを持って、カカシの向かい側へ座り込んだ。


「・・・ひどいね、何も本人の前で、直接言うことないデショ」
「俺は陰口は好かん。だから、本人に直接ぶつけられないことは口にせん、と決めとるんだ。逆にぶつけられるモンは、遠慮なくぶつけるしな。今みたいに。
もっとも・・・言いたくても言っちゃまずいこと、なんざ、世の中には山ほどあるが。
その辺を分かってない奴らが、今も昔も多くて困る、全く」
「そ、だね。今も昔も、ね」


 思い当たる節がありまくりのカカシは、少し肩をすくめたきり食事に専念した。


「気にするな。お前が来なかったおかげで、取り分が増えたって喜んでいた奴もいるんだ。給料日前のエビスとか、ゲンマとかがな」
「・・・出たよ、ポジティブ発言」
「え? ゲンマって、中忍試験の時審判してた、あの男か? 何であいつがガイのところに?」
「それにエビスって人も、確か木ノ葉丸くんの担当上忍してるあの人よね? ガイ先生、知り合いなの?」
「ガイ先生って、交流関係が広いんですねー」


 思いもよらない人名が飛び出し、ネジたちが再び混乱するのを目の当たりにしたカカシは、口の中のものを全部飲み込んでから、解説してやる。


「ゲンマもエビス先生も、ガイの元マンセル仲間だよ」
「・・・つまり、今のあたしたちみたいな関係、ってことですか?」
「ああ、なるほど」
「それにしては、随分タイプが違いますよね・・・とっても個性的、って言うか」
「リー、あんたが言わないで」
「リー、お前が言うな」
「ええーーーーー!?」
「テンテン、ネジ、お前らも人のことは言えんと思うぞ?」
「ガイ、その言葉、そのまんまお前に返したいよ」
「何をぅ?」


 類は友を呼ぶ、だったか?
 それともこれは、人のフリ見て我がフリ直せ・・・はどこか違うか。


 失笑を禁じえないまま、ネジは目の前の喧騒を何となく眺めていたのだが、不意に目が、カカシと合う。


[5]続きを読む

08月03日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る