ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■正義の味方にあやかって(仮すぴ)
ご飯粒のついた指を舐めながらそう答えた滝は、『スカイライダー太巻き』にまだ未練があるらしく、ルミの持った皿をちらちら眺めている。
そして村雨はと言うと、こちらもつられてつまみ食いを決行しようとしてルミに叱られ、海堂には呆れられていた。
ラップラップ、と台所へ取って返すルミを見送り、海堂はふと浮かんだ疑問を口にする。
「ところで、恵方巻きってさっきも言ってたけど、太巻き1本を食べ切るんだろう? さっきのがもう、切り分けてあったのは何故だい?」
「いやー・・・作るンがスカイライダーでっしゃろ? 平和をもたらした仮面ライダーを食う、言うて、逆にバチ当たりそうな気がするもんやさかい」
ネオショッカーの首領とかを作れたんなら遠慮なく一本かじりしてやったんに、と、苦笑するがんがんじい。
「だったら、最初からそっちを作ったらよかったんじゃないのか?」
村雨の疑問もごもっともだが、「わい、そこまで器用やないし」とがんがんじいは続けた。
「この間休み時間中にテレビで、パンダの巻き寿司の作り方やっとったんや。案外簡単な仕組みやなーって思うたんやけど、ひょっとしたら仮面ライダーに転用できるんやないか、て思いついて・・・やっぱうまくいったわ〜v」
「パンダ、ってお前・・・★」
───似ているような気が、しないではないが、だが、しかし。
仮面ライダーをパンダになぞらえる、なんて、結構大胆だよなあ、と滝辺りは思ったりする。
・・・ただ、平和の使者にも例えられる世界的アイドル? と肩を並べるのなら、まだ光栄な方だろう。彼らを知らない一般人にはむしろ、怪人呼ばわりされるのが常だったし。
一方、大皿にラップをかけて戻って来たルミは、ふう、とため息をついた。
それはどこか、落胆の色もこめられているようにも見えて。
「ルミはん、どないしたん? 口に合わへんか?」
「あ、ううん、そうじゃないの。ただ・・・」
口ごもりながら落ち着きなくチラ、と傍らに立つ村雨へと視線をやるのに、滝も、そしてがんがんじいも気がついた。
───ははーん、ZXを象った太巻きも作りたい、と思ってんだな?
もともと女の子は、可愛らしいものが大好きだ。売っていれば買いたくなるし、作ることが出来るのならば自分で作りたい、と思って当たり前だ。
それを察したのだろう。がんがんじいは自分の胸をどーん! と叩いて請合った。
「別の模様の恵方巻きも作りたいんやな? 大丈夫だいじょぶ、ワイもパンダ巻き寿司からヒント得た、言うたやろ? ちょっと配色とか変えたら、すぐ出来るて」
「ホント?」
「ホンマホンマ。そや、材料まだあるさかい、もっと色々作ってみよか?」
「うん! ちょっと待って、メモ用紙持ってくるから!」
「よっしゃ、ぎょうさん作るで〜」
嬉しそうに台所の準備をしに姿を消す、ルミとがんがんじい。
和気藹々とした2人を見送って、滝はぼそりと呟く。
「パンダの恵方巻き、か。そんなのをテレビで話題にしてた、ってのは、やっぱ日本が平和になった証拠だな・・・」
「そう、だね。去年はとても、それどころじゃない状況だったし」
海堂が答えるのに頷いて、滝は無言のうちに村雨の腕を軽く叩く。
それは、村雨たち仮面ライダーへの感謝の気持ちからであり、村雨のくすぐったげな、かつ誇り高き笑みは、滝からの賞賛をきちんと受け止めている証拠だ。
彼に不敵な笑みを返した滝は、ふと別の疑問に気づく。
「しっかし・・・何でがんがんじいもわざわざこっちに来て作ろう、なんて思ったのかねえ? 自分たちだけで食べてる方が、金だって時間だってかからないだろうによ」
「今、がんがんじいと筑波さんは別行動をとってる、って聞いてるが」
「え? そうなのか?」
「・・・筑波さんたちは治安維持のために、日本各地に散っているんだろう?」
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02月03日(金)
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