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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■君の名を呼べない(後編) BL■ACH
 いい加減焦れたルキアが、話の要点を絞って、一気に畳み掛ける。
 俺は少しヒヤリ、としたが、さすがにコンも彼女のやり方をそれ以上は、非難しなかった。

 ただし、ふと見ればコンのやつ、何故か顔の辺りが赤くなってる。・・・いい加減、その仕組みと素材に疑問が残るぞ、縫いぐるみ。

「だから、その・・・『コンちゃん』・・・です」

「「───はい??」」

 俺とルキアは、見事にハモった。
 さっきまでの剣幕はどこへやら。俺たちの視線を浴びたコンは何やら、身の置き所がなさそうな、いたたまれなさそうな雰囲気になっている。

「あちこちの雑誌で、やたら『コンちゃん』って言葉が多用してありまして・・・」
「ええと、それってひょっとして、さっき井上にお前が『君』付けて呼んでくれ、って頼んでた理由なのか?」
「・・・まあな・・・」
「だからどうして、そんなにコンが恥ずかしそうにしているのだ? 犬や猫の名前に同じ名前をつけていても、別におかしくはないと思うのだが」
「だよなあ。どっちかって言うとその名前、キツネにつけそうな感じだけど」

 実際、俺がコンのことをそう呼ぶたび、事情を知らない奴らは首を傾げてたっけ。コンのヤツはどこからどう見てもライオンの縫いぐるみで、キツネには見えないもんな。

 が、コンはそんな俺たちの様子に、深々とため息を付いたのである。

「やっぱりか・・・ひょっとしたら、と思ってたけどよ、一護。お前、全然知らなかったんだな・・・。
ま、知ってたら絶対、井上さんのこと止めただろうけどよ・・・」
「はあ? 何をだよ?」
「姐さんが知らないでいてくれたのは、ある意味ホッとしたなぁ・・・」
「どうして私が知らないと、コンがホッとするのだ?」
「いえ・・・姐さんはいっそ、そのままのアナタでいてください・・・」

 何故か遠い目で、昔を懐かしむようなコンの様子に、俺は唐突だけどイヤーな予感がしたのだった。

 ───あのコンが、持って回った言い方でなかなか本題に入らなかったぐらい、デリケートな問題らしくて。
 どうやら一般的に、俺くらいの年齢の男子なら、知ってて当たり前。付け加えれば、Hな話題にはつきものらしい代物で。
 ついでに、コン的にはルキアには、出来たら知らないままでいて欲しいもの。

 それが、あちこちの雑誌の読者コーナーで、一様に『コンちゃん』と呼ばれている・・・。

 そこまで推理したところで。

「・・・・・・・・・っ!?」

 俺の顔面は、一気に沸騰寸前に陥った。
 イヤ、顔面だけじゃない。体中の血液が一瞬で逆流したように思うのは、絶対錯覚なんかじゃないぞ!

「ココココ、コンっ! ひょっとして、ひょっとしてお前の名前をカタカナにして『ちゃん』づけすると、所謂『夜の家族計画』に必要なものになる、のか!?」
「そうなんだよ・・・。俺も最近までは知らなかったんだけどよ・・・しかも、一護の世代がその呼び方、ドンピシャらしくってよ・・・」
「なんでだあああっ! い、いくら頭2文字が同じだからって、何でアレを指す名称になるんだよっ!?」
「知らねえよっ、てめえら人間の考えてることなんざっ!」
「俺が考えたんじゃねえよっ!」
「俺の名前付けたのは、一護じゃねえかっ! あン時も安直過ぎるとは思ったけどよっ、もっと盛大に反対しとけばよかったって、後悔してんだぞ俺はっ!」
「・・・・・・っ! 過去の俺の大馬鹿野郎おっ!!」

 ───そりゃ、コンとしても気まずさ大爆発だったろう。必死こいて、井上に『君』付けしてくれと頼むわけだ。
 ここまで名前が馴染んでしまっては、今更改名するわけにもいかないし。

 ある程度叫びまくって気が済んだのか、いつしかコンの背中に漂うは、そこはかとない哀愁。・・・イヤ、マジで。

「フッ・・・何も知らなかったあの頃が、今となっちゃ懐かしいぜ・・・けどアレ以来、井上さんに『ちゃん』付けされるたびによお、俺は・・・俺はなあ、気が気じゃなかったんだぞ」
「うっ★」

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04月12日(火)
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