ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■銀英伝パロ オーディンの空の下(2)
後部座席でふんぞり返ったビッテンフェルトは、かなり呆れたような口調で続ける。
「手段を選べ、手段を。仮にも上級大将の車を盗んでいては、かえってややこしいことになりかねんところだぞ。───とりあえず今ケスラーに頼んで、緊急配備を引いてもらうと共に俺の拉致疑惑も晴らしてもらったがな・・・憲兵隊にしょっぴかれてでもしたら、どうするつもりだったんだお前は。下手をすれば事件発覚が遅れまくって、取り返しの付かない事態に陥っていたかもしれないのだぞ」
「そこまで俺はマヌケじゃないよ・・・ないですよ。俺の操縦テクニックは芸術的だって言われたことがあったくらいで」
「操縦テクニック? じゃあお前、輸送船のパイロットか?」
「あ、いえ、ゲームの話で・・・」
危うく自分の身分を暴露しそうになったかと、肝を冷やしたポプランだったが、
「だろうな。輸送船のパイロットなんてタイプには見えんぞ」
ビッテンフェルトは大して気にも留めていないらしく、やれやれと胸をなで下ろした。
とは言え、やはり帝国軍上級大将を乗せていたのではどうにも気詰まりがする。
「ビッテンフェルト提督、その辺で車を止めますから、スミマセンが降りて下さいよ」
ポプランの申し出を、ところがビッテンフェルトは一蹴した。
「何で俺が降りねばならんのだ?」
「何でって・・・危ないでしょうが。軍の重鎮であられる閣下に怪我でもさせたら、俺たちの商売あがったりですし」
「フン、お前ら民間人に任せる方がよほど危ないぞ。それに軍人に危ないとは何事だ。軍人が危地を避けていては本末転倒だろうが」
「し、しかしですね・・・」
「本当ならお前の方をどこかで降ろすべきなんだろうが、あいにく犯人の目撃者だからな。ワーレンの息子を探す手伝いをしてもらうぞ。・・・えーと・・・」
「マリネスクです、イワン・マリネスク」
「そうマリネスクだ。どうせ乗りかかった船だ、最後まで付き合え。いやー、ここのところ実は退屈していてな。不謹慎だとは思うが、この際久しぶりに暴れさせてもらうとするか」
「・・・・・・・☆」
オリビエ・ポプランは、ヤン艦隊のトラブルメーカーと呼ばれた自分のことを棚に上げ、頼むからおとなしくしていてくれ、俺を巻き込まないでくれ、そう願わずにはいられないのだった。
《続》
12月19日(水)
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