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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■そして始まる日々(4)JOJO 広瀬康一
「悪霊だと、思っていたんだ。今にしてみれば、とんだ勘違いなんだが。周囲にはスタンド使いがいなかったからな。・・・祖父に教えられて初めて、スタンドと言うものの存在を知ったんだ。使い方も」
確かに・・・それはそうかもしれない。杜王町みたいに、歩けばスタンド使いに当たる、みたいな場所こそが異常なんだろう。
そういう考えにとらわれていた僕は、またもや承太郎さんの言葉に驚かされてしまったんだ。
「君は・・・そう思った事はないのか? 無理矢理、スタンド能力を引き出されたようなものだろう」
・・・・・考えた事もなかったな。
それが、僕の本音。
だけどそれを、直接的に告げるのはためらわれて、僕は必死にふさわしい言葉を頭の中で探す。
承太郎さんの告白は、でもこれだけじゃあなかった。
「仗助が・・・君のことで気にしていた事がある。『弓と矢』に刺された君を不用意に治してしまった・・・そう言って」
「不用意って・・・」
何でそうなるんだろう?
あの時仗助くんが『クレイジーダイヤモンド』で治してくれなかったら、確実に僕は死んでいたって言うのに。
僕の表情に、考えている事がまともに出ていたんだろう。承太郎さんは何度かためらったあと、静かにこう言ったんだ。
「『クレイジーダイヤモンド』で治さなければ、君がスタンド能力を身につける事はなかったんじゃないか・・・仗助はそう、思っているらしい」
つまり、承太郎さんは・・・って言うか、仗助くんはこう、言いたかったんだろう。
本来なら助かるはずもなかった命と引き換えに、僕はスタンド能力を身につけて『しまった』。それは、平凡な生活との決別の証しで、決して欲しい能力ではなかったのに。いっそあのまま、死なせてくれれば良かったのに。
・・・そう、思わないか、と。
僕は・・・その質問には答えられそうになかった。
だから代わりに、こんな話をしたんだ。
「承太郎さんは、外国のテレビ映画ってよく見ます?」
「? いや。アメリカで生活しているくせに、おかしな話だが」
「僕の父、そう言うのが好きなんですよ。それも、警察ものに目がなくって」
「・・・刑事コロンボか?」
「それも嫌いじゃないらしいんだけど・・・父の一番のお気に入りは、白バイものだったんです。一昔前の。何度もビデオで見てたんで、僕の目にも時々入ったりして。その中に、ひどく心に残った話があったんです・・・」
1人の熱心な警官がいた。彼は余命幾ばくもない病に取り付かれていた。
同僚は、早く彼を入院させようとしたんだけど、彼はそれを拒んだ。
そして彼はそのまま、警官としての生活を続け・・・ある日、死んでしまった。事故に遭いそうになった一般人を、身を挺して庇ったのだ。
彼は死に際にこう、言い残した・・・。
『生きていればこうやって・・・人の命を助ける事だって出来る』
「僕・・・この話を見た時、人目もはばからず泣いちゃったんですよ」
その生きざまに、ショックと感動を覚えて。
「僕は別に病気じゃないし、身を挺して、なんてカッコイイことなんて出来ないと思う。だけど、さっき承太郎さんから仗助くんの話を聞いた時、ふっと思い出しちゃって」
生きているからこそ。
そう、あの時仗助くんに助けられて生き長らえたからこそ、できた事が僕にはいっぱいある。
ひょっとしたら将来、スタンド能力の事で悩んだりする事も、あるかもしれないけど。
「僕は今、じゅうぶんに幸せだって思いますよ? 承太郎さん」
「・・・そうか」
僕の言葉に、承太郎さんはそうとだけ答え。
ほんの少しだけ・・・笑った。
≪続≫
参考:白バイ野郎・ジョン&パンチ(セリフうろ覚えだけど・・・)
09月20日(木)
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