ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■Darling(4)SD・流×彩?
「それってつまり・・・初めから今大会には出場不可能だった、ってことじゃないですか、塚本先輩は!」
本気かよー、無責任じゃないかー、と口々に言うのを押しのけて、二階堂は続ける。
「まあ・・・あいつも言いづらかったんだろう。俺達が勝手に期待して、『今年はいいところまで行けるかも』なんて言っていたんじゃ、な」
───その口調自体は極めて穏やかだったが、内容はそこそこ辛らつである。部員たちは気まずそうに、お互いの顔を見合わせるしかない。
が、別の部員がもう1つの事実に気付き、声を荒げた。
「・・・って、おい彩子!お前、塚本さんからその話、聞いてたのか?」
「え? い、いいえ、全然・・・」
「何だよ、それー。あいつ転校の事隠して、彩子と交際するつもりだったのかよー。考えなしもイイトコじゃねえか」
「ああ! そういうことになるのか!? うわ〜、何かあちこちの街で現地妻見繕ってる、女ったらしみてー」
下世話な言い様に彩子が言葉を返せずにいると、二階堂がわざとらしく咳払いをする。
「・・・だけど、もし転校することを前面に押し出して告白してたら、どうかな? 『転校するまでの短い期間の思い出作り』みたいで、ヤだと思うけど。よしんば彩子君がOKしたとしても、同情で付き合って『もらってる』って気分、ぬぐえないと思うよ? あいつプライド高いから、絶対そんなのはゴメンだったろうなあ・・・」
だから、ああいう高圧的な告白しか望めなかったんだ。
そう、遠まわしに言われたような気がする彩子である。まあ確かに、二階堂の指摘通りなのだろうが。
どこか重苦しい気持ちになる彩子の肩を、流川が小突いたのはその時である。
「先輩、ドリンク」
「・・・あ、ゴメン」
慌てて手の中の飲み物を手渡す彩子。二階堂の『報告』に驚いて、うっかり動作が止まってしまっていたのだ。
流川は相当喉が渇いていたらしく、すぐさま口をつけようとしたが。
「?」
急に思い直したようにこちらを見つめ返して来て、彩子をドギマギさせる。
「・・・気にする事、ねー」
「え?」
「予告もなしに、試合直前に抜けられるより、数段マシ」
「・・・」
「予行演習みてーなもんだったと、思えばいー」
「流川・・・」
それからすぐに流川は視線をそらし、汗をふきつつドリンクを飲み始めたが、彩子にとってはその素っ気無さが逆に、ありがたかった。
・・・もしあのまま見つめられていたら、人前にも関わらず泣き出してしまいそうになったから。
彩子はこれっぽっちも悪くない。
告白云々のいざこざで塚本が退部したのも、今にして見れば部にとっては良かったのだ。
エース抜きでの、エースに頼らない体制を、早くから整える事が出来たのだ。
そう───言ってくれている様に思えたから・・・。
「・・・よし、それじゃあ後半も張り切って行くぞ! 新生・富ヶ岡中の本領発揮だ!」
二階堂の掛け声に、部員は気合の入った返事を返したのだった。
≪続≫
09月12日(水)
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