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衛澤のどーでもよさげ。
by 衛澤 創
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■言えた。
どうやら不眠の時期に差し掛かっている模様。一〜二時間程度の細切れにしか眠れない。今月からトレーニングジム通いを再開しようと思っていたのに、先延ばしになった。どんどん体力が落ちていくようで、身体が更に緩んでいくようで、怖い。
そんな中でも何とか必要なものを買いに行くことはできて、例によってMBTを履いて徒歩で出掛ける。
帰りがけ、自宅近隣の歩道を歩いていたところ、直ぐ傍の車道で信号待ちをしていた軽自動車の窓から何かが飛び出した。ぼくと自動車とが対向している恰好で停まっていて、だから運転席はぼくから見て「向こう側」にあるのだけど、その向こう側から何かは飛び出した。
煙草の空き箱だった。青色文字の「KENT」。はっきりと見えた。
ぼくは信じられないものを見た気がして、暫くアスファルトの上に落ちたその箱を見ていた。軽自動車の運転席には五〇歳代後半くらいと思しき浅黒く酒焼けした男性。ぼくの視線にも気付いていない様子。
ぼくもそのまま歩き出そうとした。でも進みはじめた三歩ほどを戻って、信号待ちしている軽自動車の前を横切って煙草の空き箱を拾った。それからゆっくりと運転席の中に向かって静かに言った。
「この街はあなたの街であると同時に私の街でもあります。私の街を汚さないでください」
軽自動車の男性は驚いたような信じられないものを見るような目でぼくを見ていた。何かを言おうにも何も出てこない様子だった。ぼくは男性の返事を待たないで歩道へ戻って帰途を辿った。
煙草の空き箱は自宅のごみ箱に捨てた。荷物を下ろして、干してあった洗濯ものを片付けて、同居猫まめのために買ってきたおもちゃでまめと少し遊んで、一ト息ついてから思った。
よくあんなことが言えたな、おれ。
【今日の失敗】
「いたずら防止用犬猫が嫌いな匂いの小袋」を買ってきたら人間にも厭な匂いだった。
06月13日(水)
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