ID:38229
衛澤のどーでもよさげ。
by 衛澤 創
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■よかったと思う……よ?
映画を観に行ってきました。今年に入ってから五本めの映画です。今年はよく観に行っていますね。昨夜レイトショーで観たのは「亡国のイージス」です。
……ああ、はい。踊らされているなーってのは、自分で判っていますから放っておいてください。

ツッコミどころは多くてナニがアレでしたが、冒頭のイージス艦「いそかぜ」甲板から艦内への映像だけでぼくは満足しました。ここだけでレイトショー料金一二〇〇円はペイ。艦船ヲタクだもーん(開き直り)。あとはどんなにナニがアレでも文句言わないや、という気分になれました。
でもパンフレット一〇〇〇円は高いと思います。巻末の台本は要らないからも少しお安くしてほしかったところです。横開き(横長の判型)もやめてほしかったです。書棚に並べるときに困るでしょう。

キャストが豪華でねえ。特に、寺尾聡さん、真田広之さん、中井貴一さんの三人をひとつの画面で見られるなんて贅沢ざます(ざます?)。「いそかぜ」の艦橋でこの三人が並んでいる場面でうっとりしてしまいました。恰好いいよ……!
また、いい芝居をしなさるのですよ、みなさん。
役者も豪華、自衛隊装備も豪華、セットも豪華。物語の整合性だとか、そういうものを求めなければ劇場に観に行って損はないのではないかと思います。

以下、ネタバレを含む内容ですのであぶり出しにしておきます。詳細お知りになりたくない方はあぶり出さないように御注意ください。

この作品に限らず、ぼくが今年に入ってから観た映画何れにも言えるのですが、内容が尺に合っていなくて、原作のダイジェストのような仕上がりになってしまっているのです。だから、細かいことが判らなくて各キャラクタの人物像が平たくなっていて、そのために物語の厚みを感じられなくなってしまっています。

たとえば、物語のキイとなる如月行がどんな少年時代を過ごしてDAIS工作員としてどのような訓練を受けてきたのかが劇中では描かれていません。そのせいで如月が優秀な工作員であることが観客には判らず、そうするとDAISが遂行しようとしている任務がどれほどの重要性と難易度を伴ったものなのかが判らず、つまりは物語の要である事件を把握しづらい状態のままで映画は進んでいきます。

そもそも「DAIS」とは何か、ということすらこの映画は教えてくれないのです。これでは警察庁と防衛庁(DAIS)との対立の構図も判らないし、そうすると佐藤浩市さん演ずる渥美大輔が何故艦艇から遠く離れた場所で悪戦苦闘を強いられているのかも判らない。制服組の混乱が描かれる意味がなくなってしまう。おそらく劇中で一番大切な台詞を口にしているのは渥美なのに。
原作を読んでいない人には難しい御話になっています。原作を読んでいない人など最初から相手にしていないということなのでしょうか。

また、中井貴一さん演ずるホ・ヨンファが溝口哲也三等海佐の身分と名を騙り仲間とともにFTG(海上訓練指導隊)を装って「いそかぜ」に乗艦したのだということも、某国工作員だからこそ母国語以外の言葉も流暢に操れるということも、「GUSOH」なる特殊兵器を入手し一部の自衛官を煽って叛乱を促したのだということも、ジョンヒとの関係も、すべて描写されていなくて、それがとても勿体ない。
内に潜む理知と狂気の二律背反を中井さんが非常に巧みに表現しておられて、キャラクタを立てるに充分な描写があればもっと迫力が出たのだろうにな、と残念でなりません。

ぼくがこれ等の人物について知っているのは、映画を観る前に原作上下巻のうち下巻の途中までを読んでいたからで、原作もパンフレットも読まずに映画に当たった人は劇中の男たちが何ゆえにそれぞれに戦っているのかが判らなくてつまらなかったのではないかととても心配です。
こういった物語の構造の部分が気にならなくて、かつ、艦船や格闘術が好きなら観ていて愉しい映画だと思うのですけどね。


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08月07日(日)
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